本稿での日本神話とは、主に古事記(上中下三巻)に書かれた古代日本の成り立ちに関する物語とする。日本書紀にも神話はあるが、分量が少なく(30巻のうち2巻)、諸説を併記していて分かりにくい。話の内容は類似しているので、基本は古事記に拠る。まず初めに、簡単に荒筋を述べる(神名はカタカナで略記)。
世の初め(天地開闢)には、コトアマツカミ(造化三神を含む五柱の神)、続いてカミヨナナヨ(二柱の神と五組十柱の神)が生まれる。最後の一組二柱がイザナギとイザナミだ。イザナギとイザナミは、日本国となる島々(大八島)を生み(国産み)、家宅や自然に関する35の神々を生む(神産み)。
最後に火の神(カグツチ)を生んだ時、イザナミは火傷を負い黄泉の国に落ちる。そこに会いに行ったイザナギは、イザナミの醜悪な姿を見て逃げ帰る。帰還後に禊を行った際に多数の神を生むが、特にアマテラス、ツキヨミ、スサノオが貴く、各々高天原、夜、海を治めることになる。
スサノオは高天原のアマテラスを訪ね、誓約(うけい:占い)を行い、各々の宝物から三柱の女神(宗像三女神)と五柱の男神を生む。その後スサノオは高天原で狼藉を働き、怒ったアマテラスは天岩戸に隠れる。それを神々が祭を催して呼び戻すことに成功する。悪行のスサノオは下界の出雲に追放される。
出雲の地でスサノオはヤマタノオロチを征伐する。その子孫であるオオクニヌシ(因幡の白兎や国造りなどの説話多数)は国を発展させる。それをタケミカズチが譲り受け(国譲り)、アマテラスの神勅に従いニニギが三種の神器を携えて高天原から降臨する(天孫降臨)。ニニギ以降は神から人となる。
ニニギはヤマオオツカミ(山の神)の娘と結婚し、その子と孫はワダツミ(海の神)の娘と結婚する。そして、曾孫に当たるイワレビコが日向の地から熊野経由でヤマトを征し、神武天皇として即位する(神武東征)。建国の詔は八紘為宇(国を家族が集う家とする)である。
その後の八代の天皇は系譜のみが述べられる(欠史八代)。景行天皇(12代)の皇子ヤマトタケルは、熊襲と出雲と東国を征討する。仲哀天皇(14代)は九州遠征の際に没し、その皇后(神功皇后)が三韓征伐を行う。ここまでが概ね神話だろう。この後の古事記では、推古天皇(33代)までの系譜を綴っている。(続く)