
防衛費11年ぶり増額へ…中国の領海侵犯受け
読売新聞 1月8日(火)3時2分配信
政府・自民党は7日、2013年度予算の防衛関係費について、11年ぶりに対前年度比で増額する方針を固めた。
増額は1000億円を超える見通しで、新型レーダーの研究などに充てられる。民主党政権が2010年に閣議決定した防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)は凍結し、年内に改定する。北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射や中国の海洋進出など日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中で、防衛政策を抜本的に見直す。
防衛省は7日の自民党国防部会で、13年度の防衛費の概算要求について、12年度当初予算(4兆6453億円)比で1000億円超増額する方針を説明した。
防衛費は、政府の財政悪化で03年度から対前年度比でマイナスが続いている。民主党の野田政権が昨年9月にまとめた13年度の概算要求でも、12年度比約600億円減の4兆5851億円となっていた。
日本周辺は、中国が国防予算を毎年増額し、尖閣諸島の周辺の日本の領海や領空の侵犯を繰り返している。北朝鮮も昨年2度にわたり事実上の弾道ミサイル発射を強行した。日本の防衛力整備は急務だが、12年度の防衛費は約4割(2兆701億円)が自衛隊員の給与や食糧費などに充てられ、このまま減額が続けば、航空機や艦艇など必要な装備の調達に支障が生じかねない事態となっていた。
最終更新:1月8日(火)3時2分
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匕首を突きつけられていながら、
防衛予算を長年削減し続けてきたのは、狂気の沙汰
防衛予算が10年ぶりに増額されることになった。日本を取り巻く脅威が日々厳しくなっているにもかかわらず防衛予算を削減してきた事が異常である。安陪内閣の実質的な仕事始めの日の1月7日午前11時2分から同43分にかけて尖閣諸島の領海には中国の監海4隻が侵犯した。日本とは対称的に10数年以上にわたって軍備を増強してきた中国は自信をつけ、挑発行動はとどまるところを知らない。
いまや中国は日本を挑発し一戦を交えたいと待ち構えているように観察される。にもかかわらず昨年末まで続いた野田政権までもが、防衛予算を削減してきた。野田政権が作成した25年度の防衛予算の概算要求額は45,851億円で、これは24年度予算額46,453億円より602億円削減である。尖閣諸島をはじめとするり広大な海洋を警備するには海上保安庁も船舶、人員が足りない。これも増強しなければならない。文字通り泥縄である。
目の前に匕首を突きつけられているような状況にもかかわらず、防衛予算を削減するのは狂気の沙汰である。周辺国に日本は無抵抗である、押せばすぐ屈服するとのサインを送っているようなものである。小泉政権から毎年、防衛予算を削減してきたが、安倍政権になって防衛予算を増やすことになったのは、事態の深刻さを政治家が少しばかり分かったというだけのことである。
制服組上層部の保身と使命感の欠如、そして従米体質からの脱皮を
2013年1月8日(火曜日)読売新聞 朝刊1面
防衛予算は毎年、削減されてきたが、その一方で装備は新規のものを取得し古くなった装備の延命措置を施すための経費がかかる。その結果、隊員を間引くように削減せざるを得ない。仮に本来10人で1個チームとなって戦闘組織を構成するべきところから一人減り、二減りというように、毎年、間引いていけば10年も経てば6人なり5人と戦力が半減するといった事態を迎える。正面の装備を見れば、いかにも自衛隊は強そうに錯覚すれば、“幹”だけの“木”に葉は落ち、枝も折られ、枯れた冬の樹木のような惨状を示すことにならないか。
陸上戦闘を旨とする陸上自衛隊においては第一線部隊を構成する人員不足をもたらし、戦闘力の弱体化をもたらす。また、若い隊員の充足が滞れば老齢化した隊員が占める割合が大きくなり、これまた戦力低下をきたす。長年の防衛予算は、見えないところで大きな問題をつくっているように観察される。
陸上自衛官の削減、毎年人員を”間引”いていけば、弱体化は免れない
(防衛省の「平成25年度概算要求額」によった)
”延命措置を”施した飛行機が飛んでいるから事故も起きる
2009年12月5日(土曜日)読売新聞朝刊39面 2009年9月29日(火曜日)読売新聞朝刊39面
このような陸海空自衛隊内部の問題点は、制服組でないとわからないことである。トップへ上り詰める制服の幹部は優秀な人物であるから、当然このような問題点を分かり過ぎるくらい分かっている。自衛隊に課せられた任務は広範多岐にわたり、それも年々増えている。それにもかかわらず彼らは、国防に支障をきたさないと受け応えてきたのか。防衛予算が削減され続けても、削減すべきではないと官僚や政治家を説得するだけの使命感も識能も責任感も無かったのか。
このような予算が何年もまかり通ってきたのは、予算を策定する過程で防衛行政にタッチする政治家や、防衛省の官僚に制服組、特に上層部の考えが反映されず、財務省官僚のペースで防衛予算が決められてきたからである。
糾弾されるべきことは、トップへ上り詰める制服の幹部は、自らの昇進をちらつかされると出世を意識するあまり、言うべきことを言わず、有為諾々、保身でごまかしてこなかったかということである。
制服自衛官出身の森本前防衛大臣が、前年より削減した概算要求額を策定したことは、象徴的である。外務省は日本の防衛も米国依存、従米体質を持っているが、外務省に出向し、そのまま外務省の職員に鞍替えした経歴の人であるが、よほど外務省の“水”に合っていたのであろう。軍人的体質の人間であれば、卑屈な従米体質の外務省職員にはなりたいとは思うまい。
自衛隊の使命遂行を考えれば、政治家に対しても防衛省だけでなく他省庁の官僚に対しても譲ってはならぬ一線がある。世渡り上手の森本前防衛大臣が策定した防衛予算の概算要求案を、安倍内閣が見直し増額することになった。これは、脅威の前面に立って国難に対処すべき制服組トップに確固たる使命感が欠如していと糾弾したようなものである。
自衛隊の任務、年々増えている、
防衛予算削減を続ければ使命の遂行は不可能である!
(24年版「防衛白書」の資料)
旧態依然の“自衛隊”、このままでいいのか
昨年12月に尖閣諸島付近の領空を侵犯した中国の小型プロペラ機は、日本の態勢をあざ笑うかのようにのんびりと飛行していったに違いない。航空自衛隊のF15が緊急発進(スクランブル)しても現場には間に合わなかった。
その後、数回にわたって接近した中国機にはスクランブルで対応して領空侵犯はなかった。ただ、空の備えはこの程度かと侮られてもしかたがない。中国がこの時期に挑発したのは日本が総選挙で事実上の政治空白にあったからだ。
防衛大綱も見直すことになったが、もともと“動的防衛力”などという概念はいい加減なものだ。軍隊、自衛隊は本来、“動的”防衛力でなければ意味が無い。”固定的”であれば侵攻してくる敵に対応することは出来ない。防衛予算削減のための屁理屈である“動的防衛力”などという考え方は破棄すべきである。また、近年は米軍の補助部隊的性格を強めつつある自衛隊のおかれた現状からの脱皮を図ることも忘れるべきではない。米国が一方的に決めた戦略に、ただただ従うだけの体質から脱皮すべきである。このような努力なくして、精強な部隊は育成できない。中国、韓国、北朝鮮およびロシアの対日挑発行動は、核の傘を含め攻撃力は米国に任せ、国家の体制のなかできちんと国防を位置づけてこなかった。そのツケが回ってきたからである。
駐留米軍へ提供するカネ、日本がダントツ!
「アメリカさんカネを出すから日本を守ってください」という卑屈な従米体質をしめすもの。
沖縄などで米軍基地に提供する地代は日本政府が負担している。
他国は実施していない光熱水料も負担している。まるで日本は米国の植民地。
2010年10月21日 (木曜日)読売新聞朝刊
尖閣諸島をめぐる緊張は今後、より緊迫していくだろう。レーダーや航空機など装備の問題は自衛隊の課題としては残る。だが、それよりも本質的なのは、旧態依然の“自衛隊”が、このままでいいのかということだ。