パペーテからモーレア島に今度は高速艇でトンボ帰り、近いからすぐ着いた。
高速艇の到着に合わせ、フェリー発着場敷地内のひっそりしたバス停から、
島を右回りと左回りのバスが出ている。
都会のバスのように時刻表で動くって感じじゃないけど、
一コ共通してるのは地元の人だけが知っている大雑把なスケジュールのようなものはあるようだ。
都合よく出発する様子の右回りのバスに乗って、
島の真裏のヌウルアとハアビティの中間にあるホテルに向かう。
タヒチのダイナミックな大自然の中に、フランス人が経営するキッチン付きのホテルがあって、
口コミでキッチン付きで何やらウチら好み。その土地で暮らすように過ごせるらしい。ネコもいた。
夫婦で建てたというホテルに着くと、フランス語でホテルの説明や、
ホテル所有の手作り風の海辺の桟橋がどうとか、カヌー使っていいよ、
的な説明を受けたけど、殆ど分からないからスルーしてた。
ホテルは穏やかな内海に面していて、夕日の頃は内海全部が鏡のように夕陽を映し出し、
その光景は刻々と色を変え遮るものがない。
茜、鮮やかなオレンジ、桃色がかった地平線が赤みを帯びた紫から青、漆黒…全面の黄昏に染まりながら、息を飲んでずーっと日が暮れるまでうっとり桟橋で座っていた。
夜中は点描の星々が、鏡の入江に降るように映る。
ウチらはここが正解だったって、この風景を見た時わかっていた。
こんなとこに来る日本人は殆どいないだろうが、モーレア島に来るなら、
西洋の系列のホテルやレストランの並んでいる賑やかなクック湾あたりの地域も良いが、
島の真裏側の、この島らしい貴重で美しい大自然の中での滞在をお勧めする。
この鏡の海にはカヌーで何度か繰り出し、朝に夕に感動に浸った。
海水が透明なので湖のように見えるが、桟橋の魚影は濃く、2人で桟橋に来て、
まず私はスノーケルを持って桟橋のパイプの階段を降りて海に入った。
遠くまで明るい浅瀬のコーラルブルーは、沖の中央辺りから色は深くなっていた。
少ししたらカヌーで沖まで行って、碧の世界を確かめてみようと思ってた。
本当に沖の群青はウチらが探していたものだったのか………
2人ともお互い、多分それは暗黙の了解だっただろう。…。
水中眼鏡をつけて海中に入って、 グルリと体を一周した時、目の前に大きな鮫がいた。
鮫の無機質な目は直径5、60cm 程の大きな顔の両面から私を見ていた。
さっき水に入ってすぐの時はいなかったのに私が一周回る瞬間にもう、ここにいた。
ヤツや桟橋に居合わせた客は、桟橋の上からその危うい状況に気づき、
鮫の大きさに驚いてなす術もなく固まっていたらしい。
あんなに近くにいたのに、鮫はすぐにまたスッと消えた。
それから慌てて階段を登ると、知らない外人が大騒ぎして手を引いてくれた。
もしかしてチェックインの時、フランス語で鮫がどうとか言ってたのはこの事だったのか?
人を襲う鮫だったらしい。桟橋の上から見ると3M以上あったと言っていた。
私はすごく近くで顔を見たのではっきり覚えていて、鮫は私を襲う気はない感じがした。
「びっくりした〜!大惨事かって、みんな大騒ぎしてたんだよ〜」
最近も魚釣りに行ってた人戻らなくて、地元の人々はサメに喰われたって噂してるらしい。
その夜は私の生還に大盛り上がりだった。
でも、あれじゃ、沖へなんて行けないってわかったから、残念な気持ちだった。
また別の所を探さないと…。
ホテル近辺で地元の人達から完熟マンゴーを分けてもらったり、星を見たり、
猫と遊んだりして地元民たらんと過ごし、次はクック湾辺りの水上コテージのホテルに移動する。
鍵を置くだけのチェックアウトだったから、タクシーを探して幹線道路に出た。
地元の白タクみたいなお兄さんが声をかけてくる。
それほどの距離でもないのに皆「60PF」と同じ価格を提示する。
こういうとこって、10分走っても1時間でも同じ金額だ。
ある時白人が、もう少し安くすればもっと稼げるからなんで安くしないか尋ねていた。
「安く働いたら負けだ、俺たちは安く働くくらいなら働かない。皆そうだ。」
そう言えば、スーパーのレジもレジ打ちしかしないし、
何人行列が並んでようと椅子に座ってマイペースで
「次」と客に指招き。日本のコンビニの店員さんは、
レジだけでもこの30倍くらいの速度でレジ打ちこなすし、ほかに商品の管理や、
掃除や、おでんまで作ってるのに、先進国最低水準のテイチンギン。
メイドはメイドの仕事しかしないし、料理はコックが作り、運転はドライバーを雇わないといけない。
これは日本以外の常識だ。
安く働いたら負け、で良いじゃない!
って、自家用車のお兄さんの車に乗り込んだが、
「60PF」と。
「あの〜、もう少し負けてくれんかのう…」(;_;)