【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

期首残高を変更することはできません!

2007-10-02 14:59:35 | 勘定科目と仕訳
期首残高(開始残高、前期繰越)は各勘定科目(損益勘定科目を除く)の前期末残高です。期首残高を変更してはいけないのは当然です。なぜならば、期首残高=前期末残高=前期末貸借対照表は会社がその意思によって確定させ、すでに外部(税務署や金融機関など)に公表されているからです。

しかし、期首残高が間違っていることが判明することがあります。そのような場合は次のとおりの処理をしてください。

(1)「当期=現在進行している事業年度」の任意の日付で修正仕訳をする。

(例1)前期に売上が二重計上され売掛金が過大になっていた
≪借方≫売上高(前期損益修正)
≪貸方≫売掛金

(例2)前期に仕入の計上漏れがあり買掛金が過少になっていた
≪借方≫仕入高(前期損益修正)
≪貸方≫買掛金

(2)税務署に、修正申告(前期の利益が増加する場合)あるいは更正の請求(前期の利益が減少する場合)をする。

ほとんどの財務会計ソフトにおいて、期首残高を容易に変更することができます。しかし、「できること」と「してよいこと」の違いを十分認識してください。
簿記会計の知識の乏しい人が財務会計ソフトを使った場合に最もよくある間違いです。

■期首残高はどんなに間違っていようが変更できない!
「正しい数字に直すのに・・・」はごもっともですが、「簿記の鉄則」ですので必ず守ってください。

■期首残高を変更してしまった場合の影響
株主資本等変動計算書、別表5(1)などの数値が前期分と一致しなくなり、収拾がつかなくなります。泥沼です・・・

【余談・データの同期性】当たり前のことです。理解できない場合は要注意です!

(その1)会計事務所との同期性
決算のみを会計事務所に依頼している場合、会計事務所は「これが最終の修正仕訳(決算仕訳)ですので、そちらの財務会計ソフトに入力してから繰越処理をしてくださいよ」といって修正仕訳を渡してくれるはずです。
この入力をしていない場合には、税務署や金融機関に提出した前期の最終的な貸借対照表(会計事務所作成)と財務会計ソフトの期首残高が一致しません。当然、正しいのは前者です(前述のとおり外部に公表しているからです)。
よくあるミスです。

(その2)社内での同期性
財務会計ソフトのデータを複数のパソコンに転々とさせて入力している場合、どれが最終か判らなくなる場合があります。誤って最終でないデータを繰越処理した場合も、上記(その1)と同様のことになってしまいます。
これも、よくあるミスです。

(その3)決算作業中の新年度のデータ入力(決算と新年度のデータ入力の同時進行)
ほとんどの財務会計ソフトにこれができる機能があるはずです。【注】つまり、前期の決算仕訳を新年度のデータ(期首残高)に自動的に反映するという機能です。これが使いこなせずに、わざわざ新年度のファイルを一から作り直している場合があります。
またの機会に説明させていただきます。
【注】決算作業中だからといって、新年度のデータ入力を止めるわけにはいかないからです(決算終了まで新年度のデータ入力を待っていると新年度の作業が滞る)。

思い当たる場合には、気を付けてくださいよ!

「たかが10行程度の仕訳が抜けたくらいで・・・」と甘く考えてはいけません。税務署や金融機関は意図的に記録を改ざんしたと扱います。
このあたりが、経理(財務会計ソフト)独特の怖さです。経理の経験をある程度積んだ者にしかわかりません(経理データの入力作業しかしたことがない者には絶対に理解できません)。
ワープロで「一字だけ」誤字脱字をするのとは全然違います。

たった一行の仕訳が命取りになるのです・・・