三一書房新書版(昭和38年2月10日第62刷発行)
8月21日 BS1の映画 「人間の條件」 全6部が終わつた
昭和34年 本州の最西端の田舎町でも 「人間の條件 第一・二部」 が封切された
が その年は錦ちゃんの 「浪花の恋の物語」 に夢中で 本編を観ることはなかつた
その後 昭和37年 連続テレビ映画(ドラマとは言わなかつた)の放映があり
母たちが床に就く頃 ちやぶ台を前にして一人で観た 冒頭のナレーション
『この物語は 戦争という極限状況の中で 自己の良心と生命を守るために
一生を苦しみ続けた男の魂の遍歴の記録である』を いまでもよく覚えている
そして 昭和38年東京勤務となり 当時道玄坂にあつた(と思う)渋谷松竹映劇で
全6部一挙上映ナイトショウがあつた 夜8時過ぎから明け方6時頃まで弁当持参で
何回か通つて観た 日本映画史上最高の戦争映画であり最高のヒューマニズム映画と思ふ
役者もみんなすごく 二度と見られない組み合わせであつた
原作はテレビ放送と同じ頃 三一書房新書版で読んだ いまも手元にある(トップの画像のとおり)
この映画と原作で 戦争といふものの不条理と無慈悲さを知らされ 父や母 祖父母たちが
生きてきた時代と戦争(特に日中戦争 軍隊)について関心を持ち 真剣に考えるきつかけとなつた
ただ 残念なのは このやうな映画(戦争 戦記 特に兵隊モノ)はもう日本では作れないだらう
兵隊をやれる役者がおらず いまの飽食暖衣タレントに初年兵や古兵(二年兵 三年兵 上等兵)
下士官(伍長 兵長 軍曹 曹長 准尉)は無理であらう
そんな面をしたタレントはどこにもいないし もしやつても陳腐になつてしまう
まして帝国陸軍の内務班なんぞできつこなく 大いに不可能
南道郎が生きていたら 『貴様らぁ たるんどる そこに並べぇー』 とか 言うか――