1年前、浪人生だった善は
少しも伸びていかない模試の結果に
やる気と元気を持っていかれて、
日ごと暗い顔になっていった。
なんとか笑顔にさせてあげよう。
一回でも笑顔になれれば、それでよい。
それだけで、今日一日を生き抜く力が出てくるはず。
笑うことが善を救ってくれる。
そう信じていた。
善は、数式や英単語などを、
目につきやすいトイレの壁に貼っていた。
その空いている隙間に2枚、張り紙を付け足すことにした。
「手のとどくところだけを見ていればいいんだ。
物事の手の付けられないほどの厄介さと、
人間の力の弱さとを考えあわせたひには、
そりゃ何もできなくなるさ。
だから、まずやってみて、
それから次にやることを考えることだ」
「われわれが欲するものはすべて、
山と同じだ。
われわれを待っており、逃げていきはしない。
けれども、よじ登らなければならない」
アラン著 「幸福論」より
トイレから出てきた善が笑いながら言った。
「誰、張り紙したの?なんか名言貼ってあるんですけど~!」
浪人生の親にとっては、
笑顔を見る瞬間が宝物だった。
一日一回、宝を発見するために、
頭をひねってアイディアを絞り出していたよ。
6月29日 おかん
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