1982年の春、東京の多摩川にサケの稚魚(赤ちゃん)が放流されました。サケは海へ出て成長し、おとなになると、産卵のため、自分の生まれた川にもどってきます。この性質を利用して、多摩川にもサケを呼ぼうというわけです。
ところで、サケはどうして生まれた川を3年も4年もおぼえているのでしょう。そのことを調べた実験があります。
支流までさかのぼってきたサケを何びきかつかまえ、鼻の穴にせんをして、もう一度、川下から放しました。すると、かなりの数のサケが、前とちがった支流の川へのぼっていきました。
ところが、鼻の穴にせんをしないで、川下から放すと、全部のサケが、前と同じ支流の川へのぼっていきました。このことから、サケは生まれた川のにおいをおぼえていて、かぎ分けるということがわかりました。
川には、その川だけの特別なにおいがあります。とてもよい鼻をもっているサケは、何百kmもはなれた遠い海から、ほんの少しだけまじっているにおいをかぎ分けながら、生まれた川まで、長い長い旅をするのです。
「若いときほど、よくおぼえる。」といいますね。サケも若いときほどよくにおいをおぼえます。ですから、サケは稚魚として育った川のにおいをいつまでもおぼえているのです。
はたして、多摩川に、サケはもどってくるのでしょうか。
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