”見出された恋”岩下尚史著 (株)雄山閣を読んだ。「昭和一代の文人に恋を仕掛けられし某夫人の回顧談を小説に仕組み、人事に実名を当てぶりの虚事ながら、或いは綺語の隙に一縷の真の覗く事もあらんかと…」と作者は書いています。ここは作り事か?真実か?などと考えながら、「仮面の告白」などを思い浮かべ読み進め、面白かった。若き日の三島由紀夫の恋を描いたとあるが、主人公は男、とか小説家で名前は出て来ない。能や歌舞伎が好きで、恋人の彼女にとってその男の魅力は知性であり、育ちの良さであり、声の響きであり、澄んだ瞳の美しさであったと言う。そうなんですね。三島由紀夫、私も好きな作家です。「春の海」のあの細かな描写、品のある綺麗な文章が…次第に血の匂いの漂う「奔馬」「暁の寺」と続いて行く。何処でどうなったのか、彼の最後を考えると理解し難いが、彼独特の”美学”であったと?
余談ですが、恋人の着物の柄や色の描写が細かく書かれていてとても美しい。その中に「白地に錆朱で三嶋菊を染めた単衣に、帯も黒地に同じ三嶋菊…」とあります。柄が三嶋暦に似ていることから、”三嶋手”と呼ばれている陶器に描かれている単純な菊の花、三嶋菊とよばれているんですね。初めて知りました。
余談ですが、恋人の着物の柄や色の描写が細かく書かれていてとても美しい。その中に「白地に錆朱で三嶋菊を染めた単衣に、帯も黒地に同じ三嶋菊…」とあります。柄が三嶋暦に似ていることから、”三嶋手”と呼ばれている陶器に描かれている単純な菊の花、三嶋菊とよばれているんですね。初めて知りました。