第149回直木賞受賞、話題の本です。短編がすべてラブ・ホテルに係った話で、最初は少しポルノグラフィーと疑って(しかし直木賞なのよね?と)迷いながら読み始めた。しかし著者の筆力、文章力に完全に圧倒されてしまった。どの話も日陰の人々の集まる舞台だが、読後はぽっかり日の光が見えて安堵する。「上手い」と思わず叫んでしまった。中でも「本日開店」は発想がユニークで、何か怖さも感じて面白かった。受賞後朝日新聞に”花の送り主”という一文を寄せていたが、一編のサスペンスを読んでいるような錯覚を起こす、洒落ていて含蓄のある受賞感想文であった。