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【岡山大学】原始左右相称動物・扁形動物の“原型(プロトタイプ)脳”から神経内分泌系の進化起源を特定

2022-03-09 02:40:16 | 理工農系
岡山大学、島根大学、近畿大学、三重大学、金沢大学、ニュージーランド・オークランド大学/オタゴ大学、英国オックスフォード大学の国際研究グループの共同研究成果です!
 
 
2022(令和4)年 3月 8日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 



<発表のポイント>
  • 脊椎動物の神経内分泌系の“要”である下垂体後葉ホルモン、「バソプレシン/オキシトシン」の同族ペプチドを、原始左右相称動物・扁形動物ヒラムシ(海産プラナリアの仲間)の“原型(プロトタイプ)脳”から発見しました。
  • 扁形動物門(Platyhelminthes)で発見したことから、この同族ペプチドをプラチトシン(platytocin)系と名付けました。このプラチトシン系は、これまで報告のあった下垂体後葉ホルモンの同族ペプチドと比べて、進化的に最も古い動物からの発見です。
  • プラチトシン系は、扁形動物においても哺乳類と同様に抗利尿ホルモン(バソプレシン)として機能していることを見出しました。これらの成果により、これまで不明であった神経内分泌系の進化起源の解明が期待されます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:槇野博史)学術研究院自然科学学域(牛窓臨海)の坂本浩隆准教授(神経内分泌学)と、島根大学、近畿大学、三重大学、金沢大学、ニュージーランド・オークランド大学/オタゴ大学、英国オックスフォード大学の国際研究グループは、脊椎動物の神経内分泌系の“要”である下垂体後葉ホルモン、「バソプレシン/オキシトシン」の同族ペプチドを原始左右相称動物の扁形動物ヒラムシ(海産プラナリアの仲間)から発見しました。

 神経ペプチドである下垂体後葉ホルモンは、脊椎動物と無脊椎動物において広く存在することから、左右相称動物に普遍的な神経ペプチドは、その共通祖先においてすでに存在していたと考えられますがその進化起源は明らかになっていませんでした。
 

図1.下垂体後葉ホルモンは、左右相称動物に普遍的だと考えられます。下垂体後葉ホルモンは、左右相称動物に広く存在している一方、それよりも先に分岐した刺胞動物等には存在しないことから、左右相称動物の祖先の“原型(プロトタイプ)脳”で獲得されたと考えられます。原始左右相称動物である扁形動物ヒラムシでその祖先型を理解できると期待されます。
 

図2.たった4個のニューロンからプラチトシンは放出される。(当該論文より改変)

 
 今回、左右相称動物の共通祖先に近いとされるシンプルな体制を持つ、原始左右相称動物である扁形動物門(Platyhelminthes)から下垂体後葉ホルモンの同族ペプチドを特定することに成功し、この祖先型ホルモンをプラチトシン(platytocin)系と名付けました。さらに、プラチトシン系は扁形動物でも哺乳類と同様に抗利尿ホルモン(バソプレシン)として機能していることを見出しました。

 これらの成果から、これまで不明であった下垂体後葉ホルモンの進化起源の解明が期待されます。

 これらの研究成果は、米国科学振興協会(AAAS)より発行されている科学雑誌「Science Advances」にオンライン(現地時間(米国東部標準時):3月4日 14:00、日本時間:3月5日 4:00)で掲載されました。
 

図3.神経内分泌系:視床下部—下垂体後葉系の作用メカニズムを示した模式図です。神経内分泌系では、ホルモンが血流(呼吸—循環器系)を介して作用することが前提となります。


◆坂本浩隆准教授からのひとこと
 数億年もの永きにわたり、古い体制を残しつつも地球上に生き残ってきた扁形動物ヒラムシさんに心より敬意を表します(しかも研究にご協力いただきありがとうございました!)。血管-循環器系を未だ獲得していないヒラムシで、神経内分泌系がはたらいていることをとても興味深く感じます。同じ開口分泌が“要”となるものの、全く別物と考えられている二者:「脳シナプス系」と「内分泌系」の進化、獲得を考証する上で非常に意義深い!と、悠久の神秘に想いを馳せることができました。
 わずか全長数ミリの中に、数億年にわたる進化の謎をひもとくヒントがある!?
 

坂本浩隆 准教授

坂本浩隆 准教授


◆論文情報
 論文名:Vasopressin–oxytocin-type signaling is ancient and has a conserved water homeostasis role in euryhaline marine planarians
     「原始左右相称動物・扁形動物ヒラムシから明らかになった抗利尿ホルモンの進化起源」
 掲載誌:Science Advances(サイエンス・アドバンシズ)
 著 者:Aoshi Kobayashi, Mayuko Hamada, Masa-aki Yoshida, Yasuhisa Kobayashi, Naoaki Tsutsui, Toshio Sekiguchi, Yuta Matsukawa, Sho Maejima, Joseph J. Gingell, Shoko Sekiguchi, Ayumu Hamamoto, Debbie L. Hay, John F. Morris Tatsuya Sakamoto and Hirotaka Sakamoto*(責任著者)
 D O I:10.1126/sciadv.abk0331
 U R L:https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abk0331


◆詳しいプレスリリースについて
 原始左右相称動物・扁形動物の“原型(プロトタイプ)脳”から神経内分泌系の進化起源を特定
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220305-1.pdf


◆参 考
・岡山大学理学部
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/


◆参考情報
・【岡山大学】ご先祖様だと信じてきたもの、実は叔母のような関係? カエル抗菌ペプチド「ボンベシン」と哺乳類神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド」とは異なる進化系譜だった
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000223.000072793.html
 

岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)

岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)



◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 自然科学学域(牛窓臨海)准教授 坂本浩隆
 〒701-4303 岡山県瀬戸内市牛窓町鹿忍130-17 岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
 TEL:0869-34-5210
 FAX:0869-34-5211
 http://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/index.html

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000546.000072793.html


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