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【岡山大学】D-アミノ酸はホヤと哺乳類で皮膚分泌に関わる共通の機能をもつ

2022-03-17 12:19:25 | 理工農系
筑波大学と富山大学、岡山大学、公益財団法人サントリー生命科学財団との共同研究成果です!
 
 
2022(令和4)年 3月 16日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/
 



◆概 要
 生物にとって非常に重要な化学物質であるアミノ酸は、光学活性という性質を持っており、同じ化学式であっても、L体とD体の2種類が存在します。不思議なことに、生物の体内にあるアミノ酸はほぼ全てL体です。しかしながら、わずかにD体が存在し、種々の機能を持つことが分かりつつあります。その代表例がD-セリンで、哺乳類では、脳内での情報伝達や、皮膚の角質層の形成に関わります。D-セリンは多くの動植物に含まれていますが、哺乳類以外での機能はよく分かっていませんでした。

 本研究では、哺乳類に最も近い無脊椎動物であるホヤの変態の仕組みを解析し、D-セリンが変態に必要なことを明らかにしました。ホヤは、幼生の時にはオタマジャクシに似た形態をしていて遊泳していますが、変態によって長い尾部を体内に吸収し、岩などに固着して生活する成体となります。

 ホヤ幼生では、D-セリンの合成酵素(セリンラセマーゼ)が発現しており、D-セリンを作っています。遺伝子操作によりD-セリンの合成をなくすと、尾部の吸収が途中から進まなくなります。尾部の吸収に必要なスペースは、皮膚の細胞が持つ小胞から内容物が分泌されて作られますが、D-セリンはこの皮膚からの分泌に必要なことが分かりました。哺乳類でもD-セリンが皮膚からの分泌に関わっていることから、D-セリンは、動物間で共通した機能を持っていると考えられます。

 本研究成果は、国際科学雑誌「Science Advances」に2022年3月11日に掲載されました。
 

図1. アミノ酸の光学異性体。L体とD体は、化学式は同じだが構造は同じではない。
 

図2. ホヤのオタマジャクシ型幼生(左)と成体(右)。幼生は尾部を持ち遊泳する。成体は固着生活を送り、その場から動かない。成体の写真では10匹程度が集団となっている。幼生は体長約1ミリメートル、成体は体長約10センチメートル。
 

図3. ホヤの変態。幼生の先端にある付着突起で何かに固着すると、尾部の吸収、体の成長の順で変態が進行し、幼若体となる。
 

図4. 尾部吸収中の幼生。体内に透明なスペースができ、その内部に尾部(緑部分)が巻き取られていく。
 

図5. D-セリンを合成できないホヤにおける変態。D-セリンをなくしたホヤは、尾部吸収が完了せず、体外に飛び出たままになる。
 


図6. スペース形成における皮膚の細胞の役割。皮膚の細胞をGFP(緑色蛍光タンパク質)でラベルしている。細胞内の黒い多数の円形構造が小胞。尾部が吸収されるスペースは、皮膚の細胞が持つ小胞の内容物が外に分泌されることで形成され、それに伴って小胞は小さくなる。D-セリンがないと、内容物が分泌されないので小胞は大きなままで、スペースができない。
 

図7. 本研究で明らかになったホヤの変態メカニズム。セリンラセマーゼの働きで、L-セリン(青丸)がD-セリン(赤丸)へと変換される。変態が始まると、D-セリンは皮膚の細胞にあるNMDARと結合し、細胞内部にある小胞の内容物を細胞外に分泌させる。内容物の蓄積によって形成されたスペースの中に尾部組織が吸収されていく。


◆論文情報
【題 名】 D-serine controls epidermal vesicle release via NMDA receptor allowing tissue migration during the metamorphosis of the chordate Ciona
(D-セリンは、NMDA受容体を介し、表皮の小胞からの分泌を促すことで、ホヤの変態時の尾部吸収を促進する)
【著者名】 Gabriel Krasovec1、保住暁子1、吉田知之2、帯田孝之3、濱田麻友子4、白石慧5、佐竹炎5、堀江健生1、森寿2、笹倉靖徳1
 1. 筑波大学 生命環境系/下田臨海実験センター
 2. 富山大学 学術研究部 医学系
 3. 富山大学 学術研究部 薬学・和漢系
 4. 岡山大学 自然科学学域/理学部附属牛窓臨海実験所
 5. 公益財団法人サントリー生命科学財団 生物有機科学研究所
【掲載誌】 Science Advances
【掲載日】2022年3月11日
【DOI】10.1126/sciadv.abn3264


◆詳しいプレスリリースについて
 D-アミノ酸はホヤと哺乳類で皮膚分泌に関わる共通の機能をもつ
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220312.pdf


◆参考情報
・岡山大学理学部
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所
 https://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/
 

岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)

岡山大学理学部附属牛窓臨海実験所(岡山県瀬戸内市)



◆本件お問い合わせ先
<研究に関すること>
 笹倉靖徳(ささくら やすのり)
 筑波大学 生命環境系 教授/下田臨海実験センター長
 TEL: 0558-22-6605
 https://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~sasakura/index.html

<取材・報道に関すること>
 筑波大学 広報室
 TEL: 029-853-2040

 富山大学 総務部 総務課 広報・基金室
 TEL: 076-445-6028

 岡山大学 総務・企画部 広報課
 TEL: 086-251-7292

<本学で研究を担当した濱田麻友子准教授(自然科学学域/理学部附属臨海実験所)との産学官連携等に関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
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     ※ ◎を@に置き換えて下さい
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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000566.000072793.html

 


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