プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 池上永一「唄う都は雨のち晴れ トロイメライ」

2021年09月27日 | ◇読んだ本の感想。
現段階でトロイメライは2巻まで出ていて、この2巻が2011年出版だから
後には続かないだろうけど、これ、好きだなあ。シリーズで読みたいなあ。
続編書いてくれないものだろうか。

形としては幕末期王朝琉球を舞台にした捕物帳なんだけどね。
池上永一らしく、マジックリアリズムっぽいというかユーモラスだし、
事件というほどの事件は起きず、解決というほどの解決はない話も多い。
ほのぼのというか、切ないような、やるせないような、南国の雨のような趣。
1冊に5つか6つの短編。

わたしは王朝琉球の雑学がたっぷり読めたので面白かった。
この人くらいでしょう、王朝琉球を書いてくれるのって。
数ある時代小説を読んでいくうちに江戸の町に知らず知らず詳しくなっていくように、
こういう話を読んで、王朝琉球に詳しくなりたい。
ついでにいえば、大和時代・奈良時代の捕物帳を書いてくれる人はいないもんか。

いろいろな雑学を取り上げてくれているんだけど、特に食べものの話が多いね。
今回はゴーヤーのところにそそられた。そう、昔初めて沖縄で食べたゴーヤーは
とんでもなく苦くって。
それもそうか、あっっつい夏に暑気払いで食べるとその苦みが効果的なのか。
暑い沖縄の夏を想う。

前巻で出て来たジーマミー豆腐が忘れられない。すっごく美味しそうだったもの。
今時、取り寄せが出来ないものではないみたいなんだけど、
「この程度のものか」と思ってしまうのが残念で、取り寄せる勇気が出ない。


一応、この話の主役は武太という半人前の築佐事(岡っ引き)なんだけど、
2巻目になるとますます存在感が薄れて来て、ちょこっとしか出て来ない。
主役は那覇の市井の人々ってことでいいでしょう。
短編ごとに、いろいろな人々の困りごとがクローズアップされる。
全てが解決されるとは限らない。悲しい幕切れの場合もある。
しかし、それも。人生さあ。


※※※※※※※※※※※※


わたしは基本的に本は一読しかしないゆえ、ここ数十年、ずっと図書館で
借りている。が、好きな作家の本はせめて1冊くらい持っててもいいよなあ。
存命の作家で好きなのは、森見登美彦、池上永一、宮田珠己、まあ池澤夏樹か。
だが彼らにしても再読したいまでの作品というとあんまりなくてね。

持っているのは、
森見登美彦は気分で買った「聖なる怠け者の冒険」、
池澤は大英博物館との縁でこれしかないかなと買った「パレオマニア」、
宮田珠己は応援の意味を込めて数冊買っており、
(読みやすいエッセイだから、病臥中など気力がない時に繰り返し読んでいる)
なんだったら文庫本は全部揃えてもいいくらい。

池上永一は、買いたい本が今までなかった。
読めば面白いし、「テンペスト」なんてすごく好きだったが、あのボリュームを
何度も読み返すかというと、そういう見通しも立たず……

池上永一は「トロイメライ」を買おう。そうしよう。
短編集だから手に取りやすいし、体調不良中でも情緒的に問題なさそうな
ほのぼの感だし、明るいし。
……が、買ってもいい本は何冊もあるのに、実際手元にあっても読まないから、
なかなかすぐに買う気にはならなくて。
森見登美彦の狸家族(嘘。「有頂天家族」)も欲しいんだけどね。
1冊分の長編はなかなか読み返さないから……

「トロイメライ」は「テンペスト」のスピンオフと言われているけど、
「テンペスト」読んでなくても全然問題ないっすよ。
たまーにちょろっと「テンペスト」の登場人物が出てくるだけだから。
「テンペスト」を読んだ人は懐かしく思えばよろしい。それだけ。


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