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大内麻紗子の【好きなことを好きなだけ】ブログ

映画「バカ塗りの娘」

9月1日に全国公開した、津軽塗職人を題材とした「バカ塗りの娘」

漆にスポットを当てた作品だし、元々津軽の変わり塗りの技法に興味のあった私にとって、SNSで知ってからずっと気になっていた映画でした。

しかしおそらくこの辺りでの上映はないだろうと残念に思っていたところ、10月27日に伊勢唯一の映画館である、単館系ミニシアターの「伊勢進富座」で公開がスタートされることを知って、これは絶対観に行こうと決めました。

さらに調べていくと鶴岡監督の舞台挨拶が行われるということで、せっかくならお話も聞きたいと思い、先月の29日に行ってきました。

1時間58分

劇場が明るくなっていく間、私の胸の中ではなんとも言えない感情が渦巻いていて、ともすれば涙が溢れそうになって、堪えるのに必死でした。

単純に〝感動した〟のひとことでまとめることのできないその感情の中には、悔しさや安堵、自分に対する苛立ちや鼓舞する気持ちなんかも入り混じっていたように思います。

「バカ塗りの『バカ』とは、ひたむきさを表す〝バカ〟で『バカ丁寧』『バカ正直』のバカ」

手先は器用でも不器用な家族。

津軽塗を通してその結びつきが描かれています。

映像の中には津軽塗の作業シーンが多く盛り込まれていて、おそらく漆芸を知らない人からすると何の作業かわからないだろうという場面も少なくありませんでしたが、何をしているかはおそらく重要ではなくて、そこから職人の父と娘という関係性や、ふたりの関係を強調する役割を担う祖父や兄を含めた家族の繋がりが見えてくるのです。

このように映し出される漆の作業が工程の説明で終わるのではなく、人を描く上で必要な要素になっているので、津軽塗が人情味に溢れたより魅力的なものとして描かれているように感じました。

また印象的なセリフも多く、原作小説には登場しないという主人公の祖父の、「やり続ける事、やり続ける事…」というセリフもぐっときました。

映画を観ながら思い出されたのは、やはり私自身が漆芸をやると決意したときのことです。

私の家は代々漆芸をしているわけではないので後を継ぐことへの共感は理解できない部分もありますが、漆芸で食べていくことの難しさや「いまからそんなことをして何になるんだ」と時代に合わないことへの心無い言葉を言われたことはあります。

自分自身がいちばん不安だし、難しいこともわかっています。

それでもやろうと踏み出したことを認めてもらいたいし、やはり応援してもらいたい。

そのためにも頑張る。

どの登場人物にもどこかしら共感できる部分があって、気づけば他人事ではなくなっていて、映画の世界に入り込んでいました。

淡々と進んでいく静かな映画だし、ストーリーが複雑というわけでは全然ないのに、観終わった後の満足感はここ最近で感じたことのないものでした。

また観たい、そう思う映画です。

鶴岡監督の舞台挨拶の後、パンフレットにサインをいただこうと並んでいたのですが、自分の順番が来て感想を伝えようと口を開いた途端、それまで我慢していた涙が一気に溢れてきて、涙腺が壊れたのかと自分でもビックリするくらい泣いてしまいました。

思い返してもめちゃくちゃ恥ずかしいですが、ある意味素直な感想をお伝えできたのでは…と開き直ることにしました。

誰もが泣ける映画、ではないかもしれません。

それでも私はぜひお薦めしたい!そんな1作です。

「バカ塗りの娘」オフィシャルサイト↓↓

https://happinet-phantom.com/

「バカ塗りの娘」全国の劇場情報はこちら↓↓

https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=bakanuri&d=20231104


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