最近SNSで漆がすこーし賑やかなように感じます。
でもそれはおそらく自分が漆というものに多少なりとも携わっているからなのでしょう。
人口の1%すら気にも留めていない話題が目にとまるし、ついツイートを漁ってしまうのです。
発端は紀州漆器を取り上げたAmazonのこの記事。
確かに私も初めてこの記事をInstagramの広告で見たときにはうーんと唸ってしまいました。
否定的というわけでなく、なんだか腑に落ちないなみたいな気持ち悪さを感じたのです。
そしてその僅かな引っかかりは、SNSで小さな意見を生みました。
〝コレを「漆」と呼ぶのは恥ずかしい〟
このツイートを読んだ時あれ?と思いました。
どの部分を「漆」じゃないと言っているのかな?と疑問に思ったのです。
記事には〝自動車ブランドに高級車や大衆車があるように、伝統工芸品にもグレードのグラデーションがあっていいと思うんです。だからこそ、100円ショップで漆器が売られていても否定しません。〟という言葉が書いてありました。
もしかしたらこの部分から漆を使わないウレタン塗装をしていると読み取ったのかな?とか、文章と合わせて掲載されているのが吹き付け塗装の写真で、それをウレタン塗装と見たのかな?とか。
でも記事のどこにもウレタン塗装という言葉はない。
私は商品を販売しているというAmazonのショップに飛びました。
すると今度は「漆」という文字が見当たらないのです。
取り扱っている商品全てではありませんが、詳細の仕上げタイプにはウレタン塗装やポリエステル塗り、カシュー塗りと書いてあります。
おそらく記事を読んだ時に感じた気持ち悪さ。
それはおそらくこのことだったんだと思います。
記事には紀州漆器の文字。
そして70年に渡って紀州漆器の製造・販売を手がける老舗企業という言葉。
しかし販売されているのはほとんどが漆を使っていないウレタン塗装等の商品。
いや、つくっているものや売っている商品がいいとか悪いとかという話ではなく、なぜ記事にウレタン塗装と書かないのか。
その言葉をあえて使わないように言い回しを考えて誤魔化しているようにしか見えないんです。
それが気持ち悪い。
だって自分たちがしていることは正しいことだと、この時代に生き残るために見出した方法なのだと言っているのに、漆を使っていないことに引け目を感じているような、そんな記事に私には見えてしまったんです。
もちろん個人的な感想ですが。
漆業界で生き残るのは大変です。
新しいことを取り入れていくことは必要なことだと思います。
百均に売られているような漆器風のものだって、「漆」というものが伝統として日本にあるという知識的な部分を無くさないためには一役買っていると思います。
てっぺんがあるなら裾野にはいろんなものがあっていいと思うんです。
だからそういう道に進んだ漆器屋さんがあったってもちろんいい。
でもこの記事は読む人を惑わせていけないなと思いました。
漆について知らない人が読んだら、おそらく塗りに漆を使っていると思うと思います。
だって漆器屋さんの商品だから。
商品のページに飛んで詳細を見て、ウレタン塗装だと気づいた時にどう思うでしょう。
いや、そもそも漆とウレタン塗装の違いがわかるのでしょうか。
中にはウレタン塗装と気付かずに購入してしまう人がいるのでは?
そう考えるとゾッとします。
漆器のイメージを悪くしているのは業界の人間だと、10年前にはすでに言われていました。
それがこの先ますます加速しないことを祈るばかりです。
いまは海外で金継ぎがブームになっているそうですが、それもほとんどが漆を使わないなんちゃって金継ぎなんだとか。
漆が注目を浴びて評価されるのは業界にとって嬉しいことですが、一方で間違った情報のみが一人歩きしてしまうのは危険です。
私自身もついつい新しいことをしたくなってしまう人間なので、よりこういったことには気をつけていかないとなと思いました。
ワークショップなどではかぶれの問題等でどうしても漆の代用品を使わなくてはいけないことも確かにあります。
でも漆を無くす方向より、漆の新しい活用法なんかがもっともっと生み出されたらその方が私個人としてはワクワクします。
そんな提案が自分でもできるように頑張りたい。
最後に、ウレタン塗装の商品は漆器ではありません。