「神は死んだ」
と、
ニーチェが言った。
大げさな言葉だけど、
まんざら嘘でもないらしい。
嘆かわしいほどの苦難が、
次々とやってきては、
僕をノックアウト寸前まで追いこんでいく。
もし、ニーチェの言葉が間違っているとするならば、
一時期、「第六天魔王」と名乗っていた僕への、
神からの挑戦なのかもしれない。
先日、麻布で仕事を終え、
芝公園から首都高速に乗った。
レインボーブリッジを渡っている途中で、
ひどい事故渋滞に巻き込まれた。
たまにあることなので、
とくに気にせず、のんびりと東京の海の景色を楽しんでいた。
そんなときだ。
なんの前触れもなく、
僕は悲劇のうずまきに飲みこまれた。
また(下記参照)…
おぞましい便意が襲ってきたのだ。
トイレのない首都高速、
しかも、
事故渋滞中。
状況は最悪だ。
頭が真っ白になり、
いい戦略が浮かばない。
ただただ、僕は渋滞の波の中にいる。
車の振動が僕のお腹を刺激して、
腹痛は強まるばかりだ。
おでこに冷や汗がにじみ、
口の中が乾きはじめた。
小刻みに深呼吸しながら、
下半身の一部に神経を集中し、
その暴威を抑えこむことに必死になる。
車はまだまだ動かない。
ブラックホールのような渋滞だ。
気分転換にラジオをつけると、
バッハの『G線上のアリア』が流れてきた。
癒しの曲だ。
天空をふわりと舞ってるような心地になり、
すべてを許せるような気持になった。
その瞬間、僕は我に返る。
いや、いや…
癒されてる場合じゃない。
この状況で必要なのは、
『極度の緊張』と『燃えるような闘争心』だ。
万が一、車内での惨劇になれば、
『事故車』扱いになり、
下取り価格が下がる可能性がある。
あわててラジオを消した。
渋滞がようやく動き出す。
が、
車と一緒に腹痛も加速していく。
ついに…
僕の意思に反して、うなり声が漏れだした。
身の毛もよだつような声。
さかなクンのような可愛い声の僕から想像もできない声だ。
僕は世界中の神と仏に祈りを捧げた。
まさに、困った時の神頼みだ。
人間の弱さを思い知る。
神秘的な気分になったせいか、
僕の中で『小フーガ ト短調』が流れ出す。
なんとか無事に有明の出口で降りた。
ただ、腹痛は臨界点に到達寸前だ。
有明コロシアムの方に向かい、
コンビニを探す。
幸いにもすぐに見つかる。
犯人を追いつめた刑事のように、
車を停め、飛び出した。
人目もはばからず、
店内を走り抜け、トイレに向かう。
トイレは空いていた。
だがまだ気は抜けない。
ドアノブをつかむ手が震えている。
個室に入り、
身悶えるようにジーンズを脱いだ瞬間…
僕の目にこんな落書きが飛び込んできた。
『しゃがむな!きけん!』
さすがに…
呆然としたぜ。
そのあと、
ずっとずっと…
この曲が僕の中で流れていた。
『便所の落書き』
http://blog.goo.ne.jp/vaisraveena/e/c06286ce8f5bfb859e2c244ea47c9a94
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福岡から高速に乗り途中で便秘薬が効いてきて。
なんで!?まだ相当、時間かかるはずなのに!!って。
脂汗が出てきて一番近い郊外パチンコ屋さんに行ったら
3人並んでて我慢できずに「お願いします!便秘薬が効いてきてもう、我慢できません!先に入らせてください!!」と言ったらみんなが「あら、大変!先に!!」と入らせてくれました。
車に乗ってる人は何があるかわからないので紙おむつを用意してるという友人がいたよ。
この音楽と文章がとても合っていて面白かった。
G線上のアリアは弦楽奏者には必修科目なのですが、、、
もう、イメージが排べ〇と。
ニーチェではないですが、
私の中ではバッハは死んだ…。完全に。
あと、以前の記事で有名な書き出しを当てろ、
あれ、漱石の坊ちゃんですよねw
ナイスエピソード。
パチンコ屋さんのお客さんって優しいんだね。
負けてたらギスギスしてそうじゃんw
出ないのに、排便も出せないのか!って。
あぁ面白かった^^
ごめんなさい。心より謝ります。
みゃー大工さんは僕の冗談をわかった上でコメントしてくださってますが、
バッハを冒涜した、と、誤解されてなくおかしくない記事ですよね。
ただ、言い訳すると、
実は僕、バッハの大ファンで、
以前、一緒に暮らしてた犬にもセバスチャンと名付けてました。
僕の生活はすべてがバッハなんです。
家族で仲良くしてるときも、
友達と楽しんでる時も、
恋したときも、
恋人と初めてキスしたときも、
いつもバッハ。
バッハを殺さないで^^
>あと、以前の記事で有名な書き出しを当てろ、
あれ、漱石の坊ちゃんですよねw
大正解!読んでくださったんですね。
ありがとう。うれしいです。
ボヴァリー夫人でエンマが毒を飲んだとき、効くまでの効果音になったことがあります。
存じ上げてますが…
僕の下品なオチには合わないような気がします笑
ただ、この曲、音姫とかになっていてもおかしくない優雅な雰囲気ですよね。