いくつかの文献を参考にする限り、知的な活動が認知能力の老衰を食い止められるとは言えそうにない。
現状、健常な高齢者を対象とした研究で、過去に就いていた職業の専門度と認知能力の老衰の傾向にはある程度の関係性がある、とするお話はいくつか存在する。
いわく、専門性が高く"頭を使う"ことが多かった職業に就いていた人は老衰のスピードが遅くなる、というのだ。
これに類似するものとして、読書や議論などのいわゆる"頭を使う"作業をする人は老衰のスピードが遅い、なんて主張もある。
こういったお話では、たいてい「刺激の多い人生と出来事が、私たちを老衰から守ってくれる」「能力は使わないと衰えていく、使えばその分老衰を遅延できる」なんて論調を展開する。
この論調自体はあり得そうだし、実際に効果アリとする結果も出たという。
まぁ、"頭を使う"作業そのものが老衰に与える影響は全体の1%だったわけですけども。
なぜここまで影響が小さいのか、というお話だが。
これに関しては、問答1つで説明できる。
「"頭を使う"人とはどういう人か」
「"頭を使える"人とはどういう人か」
便宜上、環境を理想的なものとして定義した場合、
その答えは「使える頭がある人だ」となる。
認知能力の老衰の傾向はその50%を老衰前の認知能力で説明でき、認知能力が高いほど老衰は遅く、低いほど早くなるという。
つまり、"頭を使う"ことであたかも老衰が遅くなっているかのような高齢者は、そもそも"頭を使える"だけの認知能力を持っているから老衰に抗えているのだという。
ーーー「還暦超えてから英語勉強し始めて英語の文献も読むようになったけどナニコレ超楽しい」
興奮気味に訴えるのは、青山学院大学卒の友人だ。
参考文献
Emily L. Smart, Alan J. Gow et al. (2014) Occupational complexity and lifetime cognitive abilities.
Forstmeier, S., & Maercker, A. (2008). Motivational reserve Lifetime motivational abilities contribute to cognitive and emotional health in old age.
Ian J. Deary, Janie Corley et al. (2009) Age-associated cognitive decline.
Schooler, C., Mulatu, M. S., & Oates, G. (1999). The continuing effects of substantively complex work on the intellectual functioning of older workers.
Yang, L., Krampe, R. T., & Baltes, P. B. (2006). Basic forms of cognitive plasticity extended into the oldest-old Retest learning, age, and cognitive functioning.
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