2013年に発表された論文によると、人間は時間の経過に伴うモチベーション・好みの変化を過小評価するバイアスがあるとの事。
そのバイアスは通称「歴史の終わりの錯覚」「歴史の終わり幻想」ともいう。カッコイイネ。
人間の好みはめまぐるしく変わる。
10年前なにが好きだったか、5年前なにに熱中できていたか、1年前なにに夢中だったか。いまの性格と照らし合わせると、たいていの人は全部違うはずだ。実際に思い返してみてほしい。
その中には「今考えると、どうしてあんなくだらないものを好きになったんだ」と思うものもあるだろう。
好みが変わるほどの大きな変化。それがあったことは、たいていの人はすんなり納得するはずだ。
だが、それらと同じことが将来にも起こりうることを、人間はなかなか納得しない。変わったことは認めるが、変わることは認められない。
いま現在が完成形であり分岐点であり最高なのだと、自負してやまない。
変わらない保証も証拠もないのに、自分はこのままであり続けると願っている。
いま好きなことを追求してやまない自分を正当化するためか、自身の経験で裏打ちされた事実を、いつまでも認めない。認めないでいる。
そして年月が経てば「あの頃の自分は完成形でもなんでもなかった、何もわかっちゃいなかった、うぬぼれていたんだ」と変わった自分にそう評価され、場合によっては恨まれるのだろう。
……で、変わった自分も、これからも変わり続けることを認めないのだろう。あの未熟だった自分がここまで成長したんだ、もう変わらないさと豪語して、ね。
人間の好みはめまぐるしく変わる。
説かなくてもわかることだから、あえて言おう。
参考文献
Jordi Quoidbach et al (2013) The End of History Illusion.