
2010年に発表された論文によると、スポーツ選手はそうでない人に比べうつ病になりづらく、また観測されたうつ病のレベルも低かったとのこと。
その理由として、スポーツ選手がスポーツ選手足りえる社会的なつながりや、スポーツ選手足りえる体力を補うための睡眠時間などが挙げられるそう。
「運動をすればうつ病にならなくなる」
「体を鍛えればうつ病になりづらくなる」
「体を動かせばうつ病が改善できる」
スポーツ選手や運動を嗜む人のうつ病の度合いが低いことを示す結果は確かにある、今回取り上げたような論文がその一例だ。
だが運動とうつ病の関係を理解しなければ、結果を乱暴に扱った喧伝活動を行ってしまい、ただ犠牲者を増やすだけになる。
うつ病患者に運動を呼び掛けても何の解決にもならない。
うつ病の治療には運動が効果的であるとただ思い込んでいては、何の解決にもならない。
彼らはその呼びかけにただ「運動をするだけのやる気と環境」を懇願するだけだ。
スポーツ選手や運動を嗜む人のうつ病の度合いが低い原因の1つに、彼らがスポーツや運動を続けられるだけの環境や要因が挙げられる。
一例としては、苦楽と達成感を共にできる仲間や達成への努力を促す自己効力感、スポーツや運動を過不足なくこなせる物理的環境などだ。
スポーツや運動を続けられる環境や要因とは、そのままうつ病とは真逆の方向に舵を切る要素でもあるのだ。
仲間とともに、目標だけ考えられる空間で、ひたすらに自分を追い込められる。これができるからこそスポーツ選手や運動を嗜む人がうつ病になりづらいのであり、これができなくなればたとえ筋骨隆々であってもうつ病のリスクが高くなるのだ。
いちおう、激しい運動をすることで、うつ病の一種である過剰なまでの反芻思考と自己中心的思考を断つことはできる。が、それはごく短期的な効力。
うつ病対策となれば継続的な運動が……いや、継続的な運動という無茶ぶりが許されるような環境が必要となってくる。
常々言うが、うつ病を侮ることなかれ。そこにあるのは人間が生来難解としてきた感情と自己認識との対決だ。
ーーー「運動をすれば解決する」なんて脳筋で能天気な発想がもたらすのは、
……提案者の承認欲求からくる快楽ぐらいだ。
参考文献
Shelley Armstrong PhD, MAT &Jody Oomen-Early PhD, MS, CHES (2010) Social Connectedness, Self-Esteem, and Depression Symptomatology Among Collegiate Athletes Versus Nonathletes.
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます