1986年に発表された論文、また1989年に発表された論文を読み解く限り、一部の楽観主義と悲観主義は「自尊心を守る」という共通の目的を持っているらしい。
楽観主義と悲観主義。「こんなこともあるさ」と気楽に考える前者と「こんなことが起こったらどうしよう」と考える後者は対比の関係で扱われることが多いが、実はお互いの相関関係はあまり高くなく、似たような構成を持つ別の考え方であるとしたのが1989年発表の論文。
楽観主義者は過去の成功体験などから自身の実力を過信し、成功した時は誇らしげにふるまい成功体験として強化するが、失敗したときは「こんなこともあるさ」と失敗した物事への関与を投げだすという後発的な自尊心防御を行う。
対して、悲観主義者は「こんなことが起こったらどうしよう」と失敗した時の情景を反復させ、失敗してもいいよう事前に自分への期待値を下げるという先制的な自尊心防御を行う……としたのが1986年発表の論文だ。
起点や考え方が強化される要素などは違うが、どちらも「自尊心を守る」という目的から発生した考え方らしく、そのため対比の関係としても扱われることが多いという。
なお、悲観主義者はうつ病患者とは違い「失敗の回避」と同時に「成功」も願っているため、成功した場合はきちんと喜べるのだという。
ーーーまた同論文では、楽観主義や悲観主義と実際のパフォーマンスにはあまり関係はないとされている。
だが、楽観主義は失敗と事実から目を背けやすい体質を理由に
悲観主義は失敗が続いた場合悲観が強化される可能性を理由に
……極端な傾斜は望ましくないんだってさ。
参考文献
William N. Dember, Stephanie H. Martin et al. (1989) The measurement of optimism and pessimism.
Julie K. Norem & Nancy Cantor (1986) Anticipatory and post hoc cushioning strategies: Optimism and defensive pessimism in “risky” situations.