花守

四季の花はそれぞれやさしく咲きこころなごみます
折々に咲く花を守りこころかすめる思い出など綴ってみたいです

散歩

2016年06月11日 11時31分22秒 | 母を想う
母は晩年散歩を楽しみにしていたようです
散歩といっても少し風変わりなのです
夕方に家事のかたずけが終わった後に私が散歩に誘うと母は何をしていても機嫌よく
応じていたものです
母はもうその頃には少し歩行がおぼつかなくてシルバーカーの荷台に腰を掛けて主人が
そのシルバーカーを押すのです
私は母の杖をつきながらシルバーカーの傍を歩くのです それは母が
「少し歩いてみます」と言った時のために持っていたものです 
そんな妙なスタイルですが三人は夕暮れの道を昔の話や今日の出来事などたわいもなく
話しながらゆっくりとあたりを巡っていたものです

私が冬になると寒くてお散歩は無理だねと母に言うと
「大丈夫です 襟巻をしてホカロンを持って出ます」と言っていましたのに
寒い冬を待つことなく
母は心地よい秋風の吹くころに静かに旅立ってしまいました
精いっぱいの愛情と優しさとたくさんの思い出を残してくれて
その風変わりな散歩もいまでは私のこころを優しくしてくれる思い出なのです
いまでも母の部屋に向かって「お散歩に行こう」と誘いたくなるのです