学生時代から本を読むことが好きだった。その頃から読書はいわば習慣のようなものになってきていたのだが、ここ数年はとくに自分でもそう感じることが多くなった。
随筆、詩集、短歌、それに歴史物や古典。植物関係や俳句や川柳にも目を通す。たまには急行でスーっと駅を飛ばすような感じの読み方もあるが、おおよそはちゃんと読みはじめたら読みきる。
むかしは小説もある程度はお世話になったが、最近は申告敬遠をしているかのように、小説とは勝負をさけている。嫌いというほどの意味はないのだが、読みだすとキリがないというふうに自分では思っている。
が、年明けに一冊だけ読むことにした。その本の評判には勝てず、10数年ぶりの小説復帰だった。
母親を亡くした中学生の娘が、離婚した父親を頼らず、祖父母とともに暮らし、日々葛藤する姿が描かれている。ふとしたことから、ママが生前もう一度行きたがっていた場所があったことを知る。それは、ママが自分に見せたがっていた景色だったということがわかってくる。
その場所がいったいどこなのか。
どういうふうな所なのか。
娘にはなかなかわからない。
内容がわかりやすく、ていねいなプロセスで書かれている。小説は読まないはずの私が、この冬に二度目の熟読をした。
自分で思い返しても、自分の変わりように笑えるほどのおかしさである。
「その景色をさがして」 中山聖子著 PHP研究所
(2018年3月20日発売)
「つれづれ(89)その景色をさがして」