昔、少年画報という月刊雑誌があった。名のとおり男の子たちに読まれた漫画で、友だちの間でも大の人気で、毎月の発売日が楽しみであった。
その中の「赤胴鈴之助」という連載マンガが特に面白く、毎月夢中になって読みあさったことを覚えている。数ヶ月遅れて発売される単行本も繰り返し読み、友だち間でも回し読みしたことを記憶している。
武内つなよしさんの当時の絵も上手に描かれているし、何といってもストーリーがすばらしく、幼心に火をつけられた思いであった。
剣をとっては 日本一に
夢は大きな 少年剣士
親はいないが 元気な笑顔
弱い人には 味方する
おう! がんばれ 頼むぞ
ぼくらの仲間 赤胴鈴之助
この歌は私が小学生の頃に流行ったと思う。
学校ではたとえ女の子でも知らない人はいないくらいの勢いであった。毎夕流れる歌は、当時のラジオドラマ「赤胴鈴之助」のテーマ曲。どなたが歌ったのかは子供心には興味がなかったが、その楽譜が欲しくて放送局まで手紙を出し、手に入れたことを覚えている。
特記したいのは、このラジオドラマは女優吉永小百合さんの芸能界デビュー作だということ。
公募で選ばれた彼女はいきなり主役として全国に名を馳せた。といってもまだ日本は貧しい時代。女優を追いかけるフアンはあまりいなかったと思う。私も彼女のデビュー作だとは、だいぶ後になってから知った。
またこの吉永さんと同時に、公募で最後まで主役を競った人がいる。結果として主役の次を演じた、現女優の藤田弓子さん。いわばこのラジオドラマで二人もの女優が公募で選ばれている。
回によっては生放送もあったらしい。
また、語り手をつとめた山東昭子さんは、当時まだ15歳で、このラジオドラマで大ブレークした。私もその時のラジオで彼女の名前は覚えた。
ラジオや歌の人気の他に、映画、続いてテレビと後を追うようになっているが、映画では赤胴には梅若正二さん、ライバルの竜巻雷之進には林成年さんが演じた。林さんは長谷川一夫さんのお子さんである。妹さん二人の長谷川季子·長谷川稀子さんは女優であり、現在もお元気でおられる。
シリーズとして映画は9本制作されているが、最後の方の主演には当時人気絶頂の浅野寿々子さん(亡くなられた大橋巨泉さんの奥様)が出演されている。
コロナ前にカラオケでこの赤胴鈴之助を初めて歌った。
懐かしさでいっぱいになり、幼き頃の思い出を持っていたという自分に感謝をしてしまいたくなった。
これも私にとってはやっぱり自分自身の歴史だなと、大人げない思いのひと時であった。
「童謡唱歌歌謡曲など(27)赤胴鈴之助は月刊マンガの少年画報から」