花火
どんと なった。
花火 だ、
きれい だな。
空いっぱいに
ひろがった、
しだれやなぎが
ひろがった。
井上赴 作詞 下総皖一 作曲
わたしたちの世代なら誰でも知っているこの歌。今の季節になると思い出す方もおられるであろう。歌詞は昭和9年に、小学校国語読本(Ⅲ)に読む詩として初載された。それが16年に下総皖一氏の作曲により文部省唱歌としてあらためて発表された。開戦をまもなく控えた当時の小学校二年生の教科書にである。
この歌を童謡と勘違いしている人がけっこういるようだが、詩や曲から考えると、それも無理はないかもしれない。でも学校の先生や、音楽に深く携わっている人には、間違ってもらいたくないなと思う。
下総氏が作曲に使用したという愛用のピアノを何度か見せてもらったが、そういう目で眺めると不思議と唱歌の世界に引きこまれていきそうな気がする。埼玉県の加須市がこの歌の発祥の地ということは大人になるまで知らなかったが。
真夏の夜空をこがす色とりどりの花火。今の季節はあっちでもこっちでも花火大会が盛んに行われている。隅田川花火は終わり、有名な長岡も終了した。
夏の季節を感じるイベントは盆踊りや夏祭りなどたくさん思い浮かぶが、花火はそれ単独で行われるほかに、そういう各種の地域行事にも顔をだす。夏一番の仕掛人であり、人気者でもある。
ところが面白いことに「花火」は俳句の世界では秋の季語となる。昔は陰暦だったということもあるだろうが、それよりも大きな理由としては、「秋祭りの奉納」として打ち上げられたのが花火の始まりらしい。それが今では運動会やスポーツの祭典にまで広く使われるようになった。五輪などでも花火を披露し、人気を得ている。
けれど季語ではいくら秋とはいえ、私は夏になるといつもこの標記にあるように真夏の夜空を思い浮かべる。そして「花火」の唱歌をしらずしらずのうちに口ずさんでいることがある。
そういえば今年のわが町の花火大会は、自宅から後半部分のみ、数年ぶりに楽しんだ。
「童謡唱歌歌謡曲(31)真夏の夜空を彩る風物詩「花火」