桜さん
毎春のことだから
あなたは
何も感じないのですか
いろんな人がやってきて
満開の樹の下で
酒をくみかわす
いろんな人がやってきて
満開の樹の下で
たくさんおしゃべりをする
ただそれだけのことだから
あなたは
きれいだなと思う人間たちを見ているけれども
春が近づいて
いつものように芽を出し
二分咲きだ 三分咲きだともてはやされて
やがて満開になり
花びらを散らしていく
ただそれだけのことだから
きれいだなと人間たちは見ているけれども
でも
桜さん
あなたの気持ちはほんとうはどうなの
もしあなたが口をきけたなら
人間たちを見ていて
何と答えるのですか
「生命の詩(29)桜の季節になりましたね」