あれは12年前の初夏だった。柳津(やないづ)という駅で降りたら、ピンクの法被を着た中年の女性三人が改札口の外にいるではないか。何かと気をとめて眺めていたら、しばらくして20~30名の団体のお客さんが下車してきた。
見ていると、特に出迎えというわけでもない。温泉のキャンペーンで粗品をJR利用客に自発的に配っていた。法被の襟に書かれていたのは「柳津温泉観光協会」という文字だったような気がする。
彼女らは愛想よく、笑顔で、親切に応対していた。その気持ちよい応対が、次に私がここへ来ようと思った大きな理由の一つであった。
通りがかりの人に尋ねて、その女将さんの宿の名を教えてもらった。
それから半年の月日が流れた。その時のリーダー格の女将さんの宿にお世話になることにしたのである。
たまたまNHKの朝イチで東日本大震災後の会津をとりあげるというので、Wディレクター他2名のスタッフの方とご一緒し、あれこれ生の姿を撮影していただいた。合計二時間近くもかかったであろうか。
昼食やお寺の参拝などが放送されたが、こういう奥会津のマイナーな温泉なども取り上げてくれるんだなとその時はNHKに感心したものだった。
宿の女将さんのほんとうに純真なおもてなしには心が動いた。料理の材料ひとつとっても決して贅沢な品は使ってないけれど、調理のそれぞれに品質以上のおもてなしがこもっていた。
放映時の有働アナの笑顔でのお話もなかなか悦に入っていた。
やがてくる会津の冬を知らせるかのように、画面にも赤い木の葉がヒラリと映っていたのが印象的であった。
それからまた時を経て、先日も仲間9人とそのときの思い出の宿に泊まった。そして最後はまたあたたかい女将さん真心に接した。
「心に残る旅(34)NHKあさイチでも放送された柳津の晩秋」