9~10月、葉の腋にたくさんの小花をつける木犀。秋の深まりを教えてくれる一番の花木といってもよいのかもしれない。
本来は木犀といえば銀木犀をさしたのだが、しかし一般に受けがいいのは金木犀のほうだろうか。最近では木犀というと金木犀と思っている方が増えてきた。
中国の桂林から日本に渡来したその金木犀。桂林は今でも町全体が金木犀に包まれている。桂はキンモクセイをさすので、桂林とはキンモクセイのある林の町ということになる。
秋の深まるなか、道端などに散り敷くさまはほんとうに美しい。一度でいいから金色と銀色と同時に敷き散りばめられた姿を見てみたいものである。
花の香りがすばらしいので、庭木として広く植えられた木犀。一つ一つの花は小さくて目立たないが、よく見ると星のような十字形をしていて魅力的だ。金木犀は濃い黄色、銀木犀は白の花を咲かす。両方とも香りは良いが、金木犀のほうがそれは強い。そして、銀木犀のほうが開花が少し遅れる。
本州南部、四国、九州に多いが、耐寒性はあるので東北でも植栽は可能。原産は中国だが、江戸時代に渡来し庭木としてお屋敷などに広く植えられたらしい。
木犀は身近において花を観賞する木ではなく、甘い香りを漂わせる使い方が良いので、植え込みの中や建物ぎわ、西日をさえぎる材料として適している。
駅までの長い道のり。秋には毎年この匂いに接したく、わざわざ裏道を徒歩で行く自分の姿を思い浮かべている。
花言葉は金木犀は気高い人、謙遜、思い出の輝き。
銀木犀は初恋、あなたの気を引く。
どれをとってもこの花によく似合う。
夜霧とも木犀の香の行方とも
中村汀女
金木犀散るにピアノを弾きやまず
山口速
「季節の花(33) 金木犀と銀木犀どちらがお好き」