あべっちの思いをこめた雑記帳

花桃の思い出

 旅を楽しむ会というサークルを主宰している。一言で言えば、旅の好きな集団というか、集まりである。現在会員は164名ばかり。でも、そんなことはどうでもいいなと思っている。何もサークルに限ったことではないが、大事なのは規模ではなく、その中身だからです。

 その旅を楽しむ会で行うイベントは、東北線(宇都宮線)の古河駅という所からの出発が多い。
 花桃で有名なその古河市という所で私は生まれ育った。途中、他の地へ転勤等で移り住んだことが併せて18年ばかりあるが、現在もまたこの生まれ故郷の古河に住んでいる。だからその日本一の花桃は以前から馴染みの花と言っても過言ではないと思う。ただ以前はその花桃が一大公園として、季節には観光客がどっと押し寄せるなどとは到底想像もしていなかった。

 その花桃の公園を一昨年、わがサークルでイベントとして催行した時のこと。仲間10人とピンクや赤の満開の花の中を皆で楽しく散策したことを覚えている。写真をパチパチ撮ったり、花の美しさにため息まじりに見とれたり。2年過ぎた今でもその時のみんなの喜ぶ姿を、今の季節になると思い出すことがある。

 あの日はちょうど園内一周が済み、駐車場に戻った時のことだった。私の車の鍵が見当たらず、紛失したことに気付き、とっさに園内の方に私は小走りに戻り始めた。その時、一人の女性が私の後を追って、再び公園の方へ探しに来てくれた。
 見つからないと知ると、もう少し奥の方かもしれないと、私はそちらへ足を向けたが、彼女はどこへ行ったのか、後ろの方にいるはずの姿が見えなくなっていた。しばらくしてから携帯電話の着信音が鳴り、「ありました~」の声。
 公園事務所に行って、紛失物がないか聞いたら、あったとのこと。私は一瞬「助かった」と思った。

 自分の責任ではなく、自分自身のことではなく、何もわからない地で、よくもまあそこまで一緒に探してくれたものだと、その時しみじみ感心した。もし逆の立場だったら、私に同じようなことができたかどうか。
 彼女の人柄というか、人間性というか、こういう人が私のサークルには必要なんだと心底思わずにはいられなかった。

                 「つれづれ(144)花桃の思い出」

 

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