山之上もぐらの詩集

山之上もぐらの詩集

二〇二五年の人類の進歩と調和

2025年03月27日 | 日記

二〇二五年の人類の進歩と調和


一九七〇年を頂点とした人類の進歩と調和は
二〇二五年の今 まさに人類の退化と混乱の渦中にある

人類の歴史が進化し続けている幻想と錯覚から
人類は目覚めはじめ そして戸惑っている

一九七〇年 我々は人類の争いと混乱は人類の進歩と調和によって
改善されて行くものと信じていた
反戦のフォークソングを歌い 一票を投じ
真面目に仕事を続ければ
少しずつでも ゆっくりとでも
やがて改善されてゆくものと信じていた

世界大戦が終わり 戦後の復興がようやくなっても
世界戦争は形を変え継続し 
紛争という小戦争が世界中至る所で起こされ 
止むことなく拡大し続けている

一九七〇年
国の威信をかけた巨大なパビリオンに
列を成して多くの来場者を集めていた多くの国が
二〇二五年の今 その名声を失いそして衰亡している
企業の未来とその製品を消費者にアピールしていた幾つもの企業が
二〇二五年の今 すでに倒産してそのブランドとともに姿を消している

一九七〇年の日本の大阪万博を体験し
そして今二〇二五年までの日本の歴史を 私は体験してきた

その体験は 私という個人の体験にすぎないのではなかった
その体験は 私という日本人の体験にすぎないのではなかった
その体験は 日本の時代の変化にすぎないのではなかった
その体験は 世界の時代の変化にすぎないのではなかった

それは一九七〇年を頂点とした人類の退化と混乱の歴史であったのだ
そしてそれは 人類の普遍的な営みの姿にすぎなかったのだ
人類の業の姿にすぎなかったのだ

二〇二五年の今 私は思う
太陽の塔における生命樹の一枝にすぎない人類の進歩と調和を
やがて枯れ落ちる一枝にすぎない人類の進歩と調和を

 


六十年の恋

2025年03月26日 | 日記

六十年の恋


俺の初恋の人は こんなババァじゃねぇ!

人生の示唆に富んだその台詞は
男にとっても女にとっても
皮肉で残酷で悲哀に満ちている

一学期の雨の日
紺色の制服姿の貴女は
赤いタータンチェックの傘を差していた

夏休みの日
白いブラウスの制服の貴女の顔は
陽に焼けて小麦色だった

二学期の秋の音楽祭の夜
タータンチェックのギターケースを下げてた貴女は
僕の知らない誰かを待っていた

冬休み 積雪の残る京都の日
貴女がはおった白いオーバーの裏地は
赤いタータンチェックの模様だった

三学期の雪の舞う朝
タータンチェックのマフラーの貴女は
誰かと一緒に下校して行った

まだまだ寒い早春の朝
卒業式の日から 六十年以上経った朝
枯れた花を付けたそのままの枝が
昨夜の風に千切られて
また吹き寄せられる

老人が思う貴女は
六十年前のあの頃の少女でしかない


シャーカ国の王子のように

2025年03月25日 | 日記

シャーカ国の王子のように

家は滅びる
国も滅びる

何十代続いた家も滅びる時が来る
何十代蓄えた富や権威も
何十代重ねた善行も施した恩も
何十代重ねた悪業も買った怨みも その家と血筋に蓄えられる
そしてその家と血筋がその業を負い そして償い尽くす
償い終えて家は滅びるのだ

シャーカ国は滅びた
シャーカ国の王子はその血筋と業を負って 
その最後を見届けた
そして往生菩提を遂げた

十代を越えて続いた父方の家も絶えた
十代を越えて続いた母方の家も絶えた
何十代続く家もやがては絶える
何百代続く名家もやがては絶える
何千年続く王朝もいずれは絶える

日本はとっくに滅びていた
日本は何度も滅びていた
我々は日本の幻想を見ていたに過ぎなかった

間もなく滅びようとする自分の肉体に
間もなく滅びようとする自分の魂に
家の血筋と業を負って往生菩提を遂げようとする自分に
何の未練の幻想が 何の来世の幻想があろうか
弥陀の姿も極楽の景色も 何の望みの幻想があろうか
閻魔の姿も地獄の景色も 何の恐れの幻想があろうか

自分はシャーカ国の王子のように
幻想の国の滅びるのを見ながら
肉体の苦痛にあえぎながら 苦しみな死ぬのだ


不健全な魂の呟き

2025年03月05日 | 日記

不健全な魂の呟き

健全な肉体に 健全な魂が宿るのなら
老人の病み衰えた肉体には 
きっと不健全な魂が宿っていると
おまえたちは言いたいのだろう

陰険で
頑迷固陋で
皮肉で嫉妬深く
わがまま勝手で
吝嗇で
不潔で貧乏で

デジタルマネーを拒み
現金のみを使い続け
TVは昔の時代劇ばかりを追い
ワイドショーのコメンテーターに毒づき
YouTubeの暴露動画に煽られ
猫と犬の仕草に癒やされて
菓子パン一つで食事をすます

健康の為にバランスの好い食事だと
それは年金生活ではとんでもない贅沢
健康寿命は金次第
しかしその長短も数年の差
つまりは運次第
健全な肉体は運次第・金次第
しかし健全な肉体も歳には勝てぬ
健全な精神は運次第・金次第
しかしそれが宿る肉体も歳には勝てぬ
肉体のおおよそは遺伝子の仕業

病気や惚けの不安を煽り
保険屋が甘く優しい言葉で老人の金を狙う
病気や惚けの不安を煽り
行政府が福祉の名の下老人の金を巻き上げる

健全か不健全か知らぬが
病み衰えた肉体に宿る歳老いた
陰険で
頑迷固陋で
皮肉で嫉妬深く
わがまま勝手で
吝嗇で
不潔で貧乏な魂が呟く


貧者迷悟

2025年02月12日 | 日記

貧者迷悟

諸行無常
会者定離
生者必滅
是即仏教

色即是空
空即是色
亦複如是
虚実は 糾える縄の如し
愚賢は 糾える縄の如し
迷悟は 糾える縄の如し
善悪は 糾える縄の如し
貧富は 糾える縄の如し
賞罰は 糾える縄の如し
強弱は 糾える縄の如し
勝負は 糾える縄の如し
老若は 糾える縄の如し
生死は 糾える縄の如し
禍福は 糾える縄の如し

昨日天国 
明日地獄
今日は六道辻の分れ道
天国地獄も 亦糾える縄の如し

クワバラ クワバラ