二〇二五年の人類の進歩と調和
一九七〇年を頂点とした人類の進歩と調和は
二〇二五年の今 まさに人類の退化と混乱の渦中にある
人類の歴史が進化し続けている幻想と錯覚から
人類は目覚めはじめ そして戸惑っている
一九七〇年 我々は人類の争いと混乱は人類の進歩と調和によって
改善されて行くものと信じていた
反戦のフォークソングを歌い 一票を投じ
真面目に仕事を続ければ
少しずつでも ゆっくりとでも
やがて改善されてゆくものと信じていた
世界大戦が終わり 戦後の復興がようやくなっても
世界戦争は形を変え継続し
紛争という小戦争が世界中至る所で起こされ
止むことなく拡大し続けている
一九七〇年
国の威信をかけた巨大なパビリオンに
列を成して多くの来場者を集めていた多くの国が
二〇二五年の今 その名声を失いそして衰亡している
企業の未来とその製品を消費者にアピールしていた幾つもの企業が
二〇二五年の今 すでに倒産してそのブランドとともに姿を消している
一九七〇年の日本の大阪万博を体験し
そして今二〇二五年までの日本の歴史を 私は体験してきた
その体験は 私という個人の体験にすぎないのではなかった
その体験は 私という日本人の体験にすぎないのではなかった
その体験は 日本の時代の変化にすぎないのではなかった
その体験は 世界の時代の変化にすぎないのではなかった
それは一九七〇年を頂点とした人類の退化と混乱の歴史であったのだ
そしてそれは 人類の普遍的な営みの姿にすぎなかったのだ
人類の業の姿にすぎなかったのだ
二〇二五年の今 私は思う
太陽の塔における生命樹の一枝にすぎない人類の進歩と調和を
やがて枯れ落ちる一枝にすぎない人類の進歩と調和を