余命

2024年03月22日 | 日記

余命


なるほど
余命を保つと言うのは
こういうことで
つまりは
余命を保つと言うことが
そろそろ難しくなってきていると言うことなのだ

日にちの経つのが 早い
土曜日は すぐにやってくる
昔は 一週間が長かった
刻の経つのが 長かった
老いぼれた今は 刻の経つのが早い
終わりに向けて 加速度を増しているような気がする

従兄弟たちが 次々と亡くなっていく
同窓会報の逝去欄に 覚えのある名前が増えていく
日本の未来が 暗く見える
若者たちの若さが くすんで見える
昔の日本を 懐かしんでばかりいる

生への執着が 薄れていく
父や母のことばかり 思い出す
父や母のあの頃が
あぁ そうだったのかと 
父や母の歳より老いた今となって 気付く

父や母のあの頃が
父や母の余命だったのだ
若者にも 余命はある
生まれたての赤ん坊にも 余命はある
老いぼれた私にも 保つ余命はある
その長い短いは 誰も知らぬことだ

自分はすでに 余命を生きたが
保つのが難しい私の余命も
眩しくはない若さの 今時の若者たちの余命より 
必ずしも 短いとは限らない


失敗

2024年03月20日 | 日記

失敗


人間は 殺し合う動物なのだ
人間は 奪い合う動物なのだ
人間は 犯し合う動物なのだ
人間は 騙し合う動物なのだ

神は 人間の道具にすぎない
神は 相手を刺し殺すナイフにすぎない
神は 相手から奪う理屈にすぎない
神は 強盗の覆面にすぎない

人間は 子供さえ殺す動物なのだ
人間は 親さえ殺す動物なのだ
人間は 百獣の最低な動物なのだ
人間は 虫けらたちにも劣る生物なのだ

彼らの理性は 彼らの中にしかない
彼らの知性は 彼らの蒙昧な知性の中でしかない
彼らの倫理は 彼らの道具である神の中にしかない
彼らの善は 彼らの肯定(イエス)の中にしかない

人間は 殺し合って進歩してきた
人間は 奪い合って拡大してきた
人間は 犯し合って増殖してきた
人間は 騙し合って繁栄してきた

人間は とっくに それに気づいている
人間は クスリで それから逃れようとする
人間は ペットで それから目をそらす
人間は 神の幻想に 自分を酔わせる

進化系統樹は 邪悪な実を付けた
その実のために やがて枝は折れる
その実のために 樹は腐り始めている
その実のために 樹は枯れ始めている

地球と言う星での 試みは
失敗だった


怪談

2024年03月19日 | 日記

怪談


理不尽が行われれば 人の心に鬼が生まれる
理不尽がはびこれば 妖怪が街の闇に住みつく
理不尽が正されなければ 怪談が夜の巷でささやかれる
理不尽がまかり通れば 幽霊が怨みの形相で顕われる

理不尽を許さぬ心が 鬼の姿となって
理不尽を犯す者を とり殺す
理不尽に踏みにじられた悲しみが 妖怪となって
理不尽を犯す者のそばで 跳梁跋扈する
理不尽にほうむられた惨めさが 怪談を増幅させ
理不尽を犯した者を 怪談の中に引きずり込む
理不尽に犯された惨めさが 幽霊となって
理不尽を犯した者に 怨みの復讐を果たす 

鬼が 人に取り憑き始めている
人が 妖怪に化け始めている
現実が 怪談になり始めている
幽霊が 人の怨みを晴らそうとし始めている

人は 怪談の中に住み始めている
理不尽を 精算するために
理不尽を犯す者に 落とし前をつけるために
彼らは 決して往生しない

 


その死

2024年03月19日 | 日記

その死


親のない子は 幸いなのかもしれない
子のない夫婦は 幸いなのかもしれない

親に捨てられる子は 幸いなのかもしれない
子に捨てられる親は 幸いなのかもしれない

果たせぬ夢は 幸いなのかもしれない
かなわぬ恋は 幸いなのかもしれない

貧しい老人は 幸いなのかもしれない
友をもたぬのは 幸いなのかもしれない

あきらめて生きるのは 幸いなのかもしれない
呆けて生きるのは 幸いなのかもしれない

未来に目を背けるのは 幸いなのかもしれない
愚かなことにかまけるのは 幸いなのかもしれない

見捨てられるのは 幸いなのかもしれない
忘れられるのは 幸いなのかもしれない

その死に 誰が なにを言えよう
その死は 幸いなのかもしれない

 


蜂の巣

2024年03月07日 | 日記

  蜂の巣


地球の生命力は 明らかに失われている

それは 人間の振るまいの精なのか
そうではない理由のためなのか
あるいはその両方なのか 私は知らない

人間の振るまいの精だったとしても
人間はその振るまいを 改めはしない 
もう遅すぎるし 人間は利口じゃない
他者を生贄にすることは出来ても
自分を生贄にすることは 決してしない

地球の生命力は 明らかに失われている
私の子供時代 当たり前に生きていた生き物たちが
ほんとうに いなくなってしまった
ほんとうに いなくなってしまったのだ

去年の春先 困ったことに 
雀蜂かどうか知らないが 
玄関先に ちいさな巣を作った
玄関先に出来た蜂の巣の蜂たちは
いかにもけなげで 
自分には 駆除することもためらわれた
夏には 活動も数も増え 巣もやや大きくなりかけたが
秋には 数も増えることなく 活動も衰えた
巣は この老人の拳の大きさにも満たない
いつか処理しなければならないと思っていた巣は
明らかに病み始めていた
それでも蜂たちは 巣を守り活動している
蜂たちの生命力は なぜか乏しい
巣の中には まだ小さい彼らの生命が宿っているのだろうか
巣を守る彼らは 飢えているのか 
それとも病んでいるのか 私には分からない
秋の長雨に 巣は茶色く 腐り始めている
初冬 巣の下に 彼らの死骸が落ちている
すでに 巣の中に宿っているはずの生命の気配はない
腐りかけた巣の影で
幾匹かの生き残りの蜂が 
温かい陽光に 余命を貪っている

間もなく 
彼らの地球は 干からびた残骸になった

冬の朝
彼らが浴びていた陽の光の中で
私は 彼らの地球を 叩き落とした
 
地球の生命力は 明らかに失われている
若者たちの生命力は 乏しい
私の子供時代に 当たり前に生きていた生き物たちが
ほんとうに いなくなってしまった
子供たちが  いなくなってしまった