女学生
春の透明な風をまとい
女学生が 顔をまっすぐに
颯爽と 傍らを過ぎる
今が 彼女の人生の最も美しい刻であることを
彼女は知らない
つぼみが膨らみ やがて花開こうとする人生の ただ一時の貴い刻にあることを
彼女は知らない
香気は ただ清々しいばかりで甘くはない
色気は ただ凜々しいばかりで色ではない
触れがたい透明な風に
自分の白い身体が 抱かれていることを
彼女は知らない
彼女にとって
彼女の今は 今の為の刻でしかない
それは 決して愚かなことではない
春空のまぶしさに
老いた自分は 思い出す
あぁ 貴方は
貴方の人生の最も美しい刻に
ほんの一瞬
私に 好意を寄せてくれたのだ
どこの世界でも どんな時代でも
少女は 永遠に 少年よりも大人だ
少女は 少年のままの自分をおいて
すぐに 大人になってしまった
そして 私は少年のまま 老人になってしまった
春の透明な風の中に
老いた自分は 思い出す
貴い気持ちで 思い出す
ほんの一瞬
私に好意を寄せてくれた少女の
彼女の人生の最も美しい刻 制服の彼女がまとっていた 透明な輝きに満ちた風を