山之上もぐらの詩集

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風の強い夜

2025年02月07日 | 日記

    風の強い夜

風の強い夜は 絶望の夢をくり返し見る

風は 河の方から吹いてくる
母親にくびり殺された男の子が 
置き捨てられた河原の方から 吹いてくる
風の泣き声は いつまでも止まない
風のうめき声は いつまでも止まない

風は 橋の方から吹いてくる 
母親に突き落とされた女の子の
河に掛かる橋の方から 吹いてくる
風の叫び声は いつまでも止まない
風の泣き声は いつまでも止まない

冷たい風は 地蔵を凍らせる
石の地蔵は 氷よりも冷たい
救いの無い風の声は 
闇の中の地蔵を絶望させる
地蔵は 悲痛の塊で出来ている

風の音が雨音に変わって
忘れたはずの顔がよみがえる
惨めな記憶がよみがえる

見返す値打ちも無い
思い出す値打ちも無い
強がるつもりもない
少しの望みも無かったはず
思いもしなかったはず
夢を見ることさえしなかったはず
ただ夢に過ぎないただの夢だったのに

風の強い夜は 絶望の夢をくり返し見る

何を夢見ていたのか
思い出せもしないのに