A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ピアニストに元気づけられるスタンゲッツ・・・・

2013-12-24 | CONCORD
Pure Getz / The Stan Getz Quartet

スタンゲッツのプレーは好不調の差が大きいと言われている。ゲッツだけではないが、来日コンサートでは手抜きプレーが目立つということもあった。気分屋なのだろう。否、いつも妥協することなく真剣勝負をしているので、上手くいく時もあれば、行かない時があるのかもしれない。
ゲッツ自身が、評論家のダン・モーガンスタインに語っている。「自分はいつも聴衆とコミュニケートしたいと思っているが、決して彼らに媚を売るようなことはしない」と。プレーヤーがのらないのは聴衆側にも責任があるのだろう。盛り上がるステージというのは自然発生的に生まれるものだ。

60年代のはじめヨーロッパから戻ったゲッツはジョビンやジルベルトと一緒にボサノバで一躍有名になった。このままジャズの世界から引退してしまうのかと思ったら、”Sweet Rain”でいきなりストレートジャズの世界に舞い戻って来た。
当時はレコードを通じてしか動向が分からいので、日頃のクラブ出演でどのような演奏をしていたかは想像することができなかった、少なくともレコードで熱い演奏を再び聴けるようになったのはファンとしては嬉しかった。

Sweet Rainの溌剌とした演奏をバックで支えたのはピアノのチックコリア、ベースのロンカーター、そしてドラムのグラディーテイトだった。すでに中堅であったカーターとテイトと較べて、新進気鋭のコリアは自己のリーダーアルバムは作ったものの、たいした実績は無く、まだニューヨークでジャムセッションに参加して他流試合をしていた頃だ。

このゲッツのプレーを支えたコリアは、翌年名盤”Now He Sings Now He Sobs”で一流入りをする。その後マイルスのグループに加わり、自己のグループReturn To Foreverが生まれる。以降、今まで途切れることなく活躍が続いている。メンバーに抜擢したゲッツに見る目があったのか、それとも熱いゲッツに影響されコリアが開花していったのか・・。
コリアが名声を得た後、ゲッツは再び”Captain Marvel”でコリアと共演する。コリア一人というよりはリターンツーフォーエバーとのコラボだった。これもすごいメンバーであったが、これを機にゲッツはまた飛躍をする。

ゲッツの素晴らしいプレーは、不思議とピアニストに支えられることが多い。もしかしたら好不調はピアノとの相性かもしれない。

ゲッツが、ニューヨークからサンフランシスコに居を移してレギュラー活動を行うようになったのは1981年。そしてコンコルドと契約してアルバムを残すことになる。また一人ベテラン大物の復帰に手を貸すことになった。
カールジェファーソンはプレーヤーに特に目新しい物を望むこことは無く、プレーヤーが本来持っている素晴らしい能力を演奏する場を与えていた。普段着の魅力を披露する場合もあれば、多少余所行きの格好をする場合があることも。そして昔の仲間との再会の場を与えることも。

最初のアルバム”The Dolphin”は、キーストンコーナーでのライブ。当時の普段着のゲッツの姿だった。ピアノは昔のウェストコーストでの仲間ルーレビィーであったし。しかし、いつも新しい物を追い求めるゲッツは、単に昔の懐メロ大会にすることはなかった。

今、アメリカに留学している宮嶋みぎわさんが御師として学んでいるのはバンガードオーケストラで有名なジムマクニーリー。ピアノだけでなく作編曲家としても有名だ。そのマクニーリーにも駆け出しの頃があった。その若い頃の学びの場のひとつが、スタンゲッツのグループであった。

75年に地元のシカゴからミューヨークに出てきたマクニーリーは、78年にはメルルイスオーケストラに参加している。サドジョーンズが抜けた後、メルルイスが自己のオーケストラづくりに試行錯誤していた時だ。この時のマクニーリーはまだピアニストとしての参加で、アレンジャーとしてはまだ表舞台には立っていなかった。

新グループ編成にあたって、ゲッツはそのマクリーニーに白羽の矢を立てた。
そして、翌年1982年の1月に生まれたのがこのアルバム。タイトルも「ピュアゲッツ」。前作が多少は昔を回顧しながらのプレーであったかもしれないが、今回は「今」のゲッツの真剣勝負。そのプレーを支えたのが、ジムマクニーリーのピアノだった。ゲッツとマクニーリーは1985年まで一緒にプレーをする。ゲッツとの相性も良かったのだろう。
マクニーリーも、その後フィルウッズのグループを経て、バンガードジャズオーケストラに戻る。ピアニストとしてだけはなく、今度は作編曲の重鎮として活躍することになる。

このアルバムでは、マクニーリーのオリジナルも披露されているが、他はエバンス、マイルス、そしてストレイホーンやパウエルの曲を、そしてスタンダードのカムレインオアカムシャイン。選曲も意欲的だが、ゲッツのプレーはまさに”Pure”そのものだ。マクニーリーのピアノも素晴らしい。

ゲッツは、クールジャズやボサノバの代名詞として語られることが多いが、実は“Pure”なゲッツはプレーも内に秘めた意欲も実にホットなプレーヤーだ。その陰には名ピアニスト有で。

モノトーンで顔を大写しにしたジャケットはConcordでは珍しいデザインだ。目立たないが良いアルバムだと思う。



1. On the Up and Up           Jim McNeely 8:10
2. Blood Count            Billy Strayhorn 3:34
3. Very Early            Bill Evans 7:05
4. Sippin' at Bell's         Miles Davis 5:02
5. I Wish I Knew          Mack Gordon / Harry Warren 7:52
6. Come Rain or Come Shine    Harold Arlen / Johnny Mercer 8:07
7. Tempus Fugit            Bud Powel 7:17

Stan Getz (ts)
James Mcneery (p)
Marc Johnson (b)
Victor Lewis (ds)
Billy Hart (ds) 3,5,6,

Produced by Carl Jefferson
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, Califoenia, January 1982
   At Soundmixers, New York, February 1982

Recording Engineer : Phil Edwards & Ed Trabanco

Originally released on Concord CJ-188 (所有盤は東芝の国内盤)


Pure Getz
Stan Getz
Concord Records

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