A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ライブで一段とパワーアップしたデュークピアソンビッグバンドの録音が発掘された・・

2015-02-20 | PEPPER ADAMS
Baltimore 1969 / Duke Pearson Big Band

ペッパーアダムスのChronologyを見ると1967年2月に、
Feb 24-26: New York: The Duke Pearson Big Band opens at the Half Note.
との記録がある。多分、これが、デュークピアソンが新たに立ち上げたビッグバンドの初舞台である。

アダムスは‘67年の年明けはレコーディングが続いていたが、一方でライブの活動はサドメルでの活動の他に、久しぶりにドナルドバードとセクステットでファイブスポットへも出演していた。
このピアソンビッグバンドの立上げはちょうど先日紹介したスタンレータレンタインのアルバムの録音の一週間後であった。タレンタインのセッションにも2人揃って参加していたが、今度はこのピアソンのビッグバンドにも2人で参加していた。久々に二人一緒に揃って活動をしていたことになる。

60年代の後半はビッグバンドが復活の兆しを見せていた。ベイシー、エリントン、ハーマン、ケントンの老舗オーケストラは、レギュラー活動を続けていたし、バディーリッチ、ドンエリスといった新しいバンドも立ち上がった。さらに、サドメルやサンラといった実験的なオーケストラも活動を開始した。いわゆるモダンビッグバンドが元気を出し始めた頃である。

ブルーノートで日々アレンジをこなしていたデュークピアソンも、このような世間の動きを横目で見ながら、ソロのバックのアレンジだけを書き続けていることにやる気も段々失せ、忸怩たる思いでこのビッグバンドを立ち上げたのかもしれない。

発起人はドナルドバードと一緒だったともいわれているが、いつも一緒にやる事が多かったボブクランショーとミッキーロッカーでまずはリズム隊を固め、他のセクションのメンバーのリクルートを始めた。メンバー集めは、バートコリンズ、ガーネットブラウン、そしてジェリーダジオンにそれぞれのセクションの取りまとめを依頼した。
結果はいずれも名手揃いだが、アダムスを始めとしてサドメルのメンバーからも何人かが加わった。

当時のニューヨークは、スタジオやテレビの仕事が多くあり、腕の立つメンバーを集めるには困らなかったが、反対に皆忙しすぎて全員が会える日を選ぶのに苦労したようだ。結局、リハーサルはサドメルの活動日とのバッティングを避け、スタジオワークの休みが多い土曜日と決まって練習がスタートする。



レパートリーはすべてピアソン自身のアレンジによる、アレンジャー主導のビッグバンドとなった。彼が前に地元でのコンサートの為に書いた古い譜面や、新しくビッグコンボで取り上げた曲のアレンジを大編成に手直ししたものまで、新旧取り混ぜてオリジナルスコアが用意された。

昔のスイングタイルを踏襲したのでもなく、かといって奇抜さや前衛性を狙った訳でもなく、当時数多く手掛けていた、ソリストのバック用の大型コンボでのアレンジを拡張した感じだ。したがって、各曲ともソロパートが多い。

立上げ後は、定期的にライブ活動を続け、自らがプロデュースを行っていたブルーノートから67年12月、68年12月と2枚のアルバム”Introducing””How Now Here This”を作った。ブルーノートのビッグバンド物は珍しいが、自らがプロデューサーを兼ねていたので無事にどちらもリリースに漕ぎつけた。

しかし、定期的に行われていたライブ活動の様子は、その実態を日本に居ては全く知ることはできなかった。サドメルの実態が、ライブアルバムがリリースされて初めて知ったのと同じ状況であった。

さて、このアルバムは1969年4月27日、ボルチモアでのライブであり、比較的最近(2013年)になってからリリースされた。という意味では、想像するしかなかったビアソンのビッグバンドのライブの様子が初めて世に出たものだ。
このライブの時点で、立上げからすでに2年が経っていたが、オリジナルメンバーが多く残っている。バンド全体の完成度も高まった状態でのライブの演奏なので、それだけで期待が持てる。
まず、録音場所だが、ボルチモアのFamous Ballroom。普段はダンスパーティーなどでも使われ所だろう、しかしこの日はLeft Bank Jazz Societyのコンサートという事で、聴くためだけの地元の熱心なジャズファンが多く集まった。



アルバムに収められているのは全部で8曲だが、どの曲もソロがたっぷりと長めの演奏なので中身は濃い。

最初のHi-Flyはランディウェストンの名曲。ビッグバンド編成前にコンサート用に書いた曲だそうだが、スインギーなストレートな曲。いきなりフォスターとタバキンのソロが圧巻で良い感じだ。
New GirlはピアソンのNonetのアルバムHoneybunsが初演だが、ビッグバンドのアルバムにも収められている曲、軽快なモダンサウンドだ。コリンズからタバキンへのソロの流れもスムース。
Eldoradoはバードのアルバムでやった曲。ここでもバードをフィーチャーしている。

ペッパーアダムスのソロが随所で繰り広げられるが、In The Still of The nightでほぼ一曲休みなく続くソロは圧巻。ピアソンのアルバムでは聴けなかった曲で、サドメルでも聴けなかったようなアダムス大フィーチャーの曲だ。

一転次はチックコリアの曲が2曲、がらりとモダンなモーダルサウンドになる。
最初のTones for Joan's Bonesではピアソンの長いソロが聴けるが、この曲は最初ブルーミッチェルのBossで最初に演奏した曲、ピアソンも気に入ったのかアルバムにも収められている。ビッグバンド編成だけに前作よりもアレンジが濃い。

次のStraight Up and Downがロッカーのドラムを中心にリズム隊が大活躍、その上でソロを交わすのはバードとアダムス、お客も自然と熱がこもってくるのが伝わる。
Ready When You Are C.Bは、その名の通り。典型的なベイシーサウンド。ビッグバンドはやはりこのような曲を一曲入れないと締まらない。
Night Songはスタンレータレンタインの1967年の録音でやった曲。フルバンド用にスコアを書き換え、テナーのソロはここではルータバキンだが、実に味にある演奏だ。

というように、普段ソリストをクローズアップするアレンジを多く手掛けていたが、ビッグバンドになっても基本的に変わりはないように思う。伝統的なビッグバンドでは良くある、アンサンブルをフィーチャーしたサックスのソリやアンサンブルのコールアンドレスポンスは、ピアソンのアレンジには無縁だ。あくまでもソリストありきで全体が組み立てられている。

このような自由度の高い演奏は、ライブで曲の時間的な制約が少ない場だとより魅力が増す。
このライブアルバムが世に出たことでピアソンのビッグバンドの魅力が一段と増した。他のライブ録音が発掘されることを願う。

1.  Hi-Fly                  Randy Weston 12:41
2.  New Girl             Duke Pearson 8:18
3.  Eldorado                Mitchell Farber 7:10
4.  In the Still of the Night          Cole Porter 9:17
5.  Tones for Joan's Bones          Chick Corea 9:57
6.  Straight Up and Down          Chick Corea 13:08
7.  Ready When You Are C.B.        Duke Pearson 7:17
8.  Night Song (Theme from Golden Boy)    Charles Strouse 11:35

The Duke Pearson Big Band
Donald Byrd  (flh, tp)
Jim Bossy  (tp,flh)
Joe Shepley  (flh,tp)
Burt Collins  (flh,tp)
Joe Forst  (tb)
Eddie Bert  (tb)
Julian Priester  (tb)
Kenny Rupp  (btb)
Jerry Dodgion  (as,fl)
Al Gibbons  (as,fl)
Frank Foster (ts)
Lew Tabackin  (ts)
Pepper Adams  (bs)
Duke Pearson  (p)
Bob Cranshaw  (b,eb)
Mickey Roker  (ds)

Produced by David A. Sunenblick & Robert E. Sunenblick
Arranged by Duke Pearson
Original Recordings Vernon Welsh
Recorded live at Famous Ballroom. Baltimore, Maryland on April 27,1969

Baltimore 1969
Duke Pearson Big Bnad
Uptown Jazz

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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ご指摘ありがとうございます (YAN)
2015-07-08 21:03:57
確かに、バ―トコリンズでした。
記事を訂正しておきます。
返信する
New Girlのトランペット (市川)
2015-07-06 21:36:03
ByrdではなくBurt Collinsだと思いますが。
返信する

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