A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

せっかくの初録音はやはりいい録音でなければ・・・

2016-01-05 | MY FAVORITE ALBUM
Emergence / Roy Hargrove Big Band

今年も新年早々ロイハーグローブが来日する。スレートアヘッドなジャズの演奏を基本とするがR&B、Hip Hop、ラテン・・・何でもこなすハーグローブなので、今回の出し物は果たして何だろうか?昨年はビッグバンドでの来日だった。
ビッグバンドといってもこのアルバムも出ていたので、ライブに行ってどんな演奏をするのか想像はできたが。普段コンボで演奏しているミュージシャンがビッグバンドを組んだと聞くと、本来の演奏を聴く以外にどんなバンドサウンドになるかを確認するのもビッグバンドファンの楽しみのひとつだ。

このロイハーグローブのビッグバンドも結成されたのは1995年に遡るという。本場アメリカといえどもビッグバンドを編成するのはなかなか大変なようだが、ハーグロープの「ビッグバンドをやりたい」という声に応えてプロモーターのJames Browneがグリニッジビレッジで開かれたジャズフェスティバルに出番を作った。ハーグロープのマネージャーも本番に備えて練習場所の確保に奔走した。ビッグバンドは誰かの協力がないと一人で頑張っても実現できないものだ。

無事出演を終えた後も、練習場所にしていたThe Jazz Galleryでリハサールを繰り返し、時にはそこでgigを行うようになった。その内、各地のジャズフェスティバルやコンサートからも声が掛かるようになった。今の時代、このような有名人が率いるバンドでもこのようなリハーサルオーケストラの形態をとらざるをえないのがビッグバンド界の現状である。もっともハーグロープは色々な活動をするので、このような形が理想かもしれないが。

継続して活動をしているとレコーディンをしてアルバムを残したくなるのも世の常だ。一度、このホームグラウンドにしているThe Jazz Galleryでの演奏をライブレコーディングした。しかしその結果は満足の行く結果ではなかったようだ。

そんな時、2008年6月西海岸のハリウッドボウルで開かれたプレーボーイジャズフェスティバルに出演の機会を得た。そして運が良いことに、そのコンサートの直後にハリウッドのCapital Studio Aが空いていた。さらにグラミー賞を数多く受賞しているエンジニアのアルシュミットのスケジュールも確保できた。50年代から数多くの名盤の録音が行われた晴れ舞台で待望のレコーディングが行われることになった。

何でも目標ができると練習にも熱が入る。本番に向けての5月、6月のホームグラウンドThe Galleryでの演奏も熱が入ったようだ。そして、コンサート出演の熱の醒めない内のレコーディング。バンドが誕生してからかれこれ20年近く経って、晴れて初アルバムが完成した。
過去にも、ビッグネームが率いるビッグバンド、例えば過去アルバム紹介したジョーヘンダーソンフランクフォスターのバンドといえども、バンドの結成から初レコーディングまでには時間がかかり、それに時の運が幸いして初めてアルバムが生まれるのが現実だ。

ハーグロープのビッグバンドの演奏は、彼のいつもの演奏のように色取り取りだ。セプテンバーレインのように歌も飛び出すスタンダードのスインギーな演奏もあれば、マンボのリズムで盛り上がって終わるマンボフォーロイ、そしてモーダルな演奏まで。まさにハーグローブの良さをそのままビッグバンドにしたような感じで勝手気ままだ。無理やり難しいアレンジの曲をやるのでもなく、仲間同士で楽しく演奏している様子がそのままの形で聴こえてくる。

曲やアレンジもハーグローブだけでなく色々なアレンジャーを起用、メンバー達も持ち寄っている。有名なアレンジャーを起用している訳ではない。先日ベイシーオーケストラの一員で来日したジェイソンマーシャルも自作曲ミスグレービーでシャッフルのリズムに乗って大ブローしている。さらには、女性ボーカルのロバータガンバリーニの参加も華を添えている。

有名ミュージシャンと数多く共演を重ねてきたハーグローブ、そして録音場所はハリウッドとなればレコーディングのために有名ミュージシャンを集めることはできたであろう。実際のメンバー達はあまりよく知られていないレギュラーメンバー、若い頃から一緒に演奏してきた仲間達、そしてニューヨークで一緒に普段一緒に演奏している仲間達だそうだ。

ハーグロープのビッグバンドはハーグロープの名前を売るわけでもなく、アレンジを売りにするのでもなく、あくまでもそれまで一緒に切磋琢磨してきた普段の仲間達の演奏そのものを売りにする手作り感が漂うバンドだ。
トランペットの世界ではすでに巨匠の仲間入りをしているハーグロークだが、偉そうな感じの先輩のマルサリスと違って思いやりのある優しい性格のハーグロープが仲間達と手塩にかけて育てたビッグバンドだ。こんなビッグバンドが増えて欲しい。



1. Velera                Roy Hargrove 4:14
2. Ms. Garvey, Ms. Garvey       Jason Marshalle 5:33
3. My Funny Valentine   Lorenz Hart / Richard Rodgers 6:00
4. Mambo for Roy             Chucho Valdés 6:37
5. Requiem                Frank Lacy 13:36
6. September in the Rain    Al Dubin / Harry Warren 6:59
7. Every Time We Say Goodbye        Cole Porter 5:56
8. La Puerta               Luis Demetrio 3:28
9. Roy Allan               Roy Hargrove 5:51
10. Tschpiso               Roy Hargrove 7:17
11. Trust                 Roy Hargrove 4:26

Roy Hargrove (tp,flh,vol,arr.)
Ambrose Akinmusure (tp)
Darren Barrett (tp)
Greg Gisbert (tp)
Frank Greene (tp)
Vincent Chandler (tb)
Jason Jackson (tb)
Saunders Sermons (tb)
Max Siegel (btb,arr)
Bruce Williams (as,fl)
Justin Robinson (as,fl)
Norbert Stachel (ts ,fl,vol)
Keith Loftis (ts,fl,vol)
Jason Marshall (bs,fl,vol)
Saul Rubin (g,arr)
Gerald Clayton (p,arr)
Danton Boller (b)
Montez Coleman (ds)
Roland Guerrero (per)
Roberta Gambarini (vol)

Produced by Larry Clothier & Roy Hargrove
Al Schmitt : Audio Engineer, Mixing
Steve Genewick ; Asistant Audio Engineer
Recorded at Capital Studio A, Hollywood, Calfornia, June 16 & 17, 2008

Emergence
クリエーター情報なし
Emarcy / Umgd

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