「たかが鳥のために手間も費用もかけない」が鮮明に
北九州市若松区の響灘埋立地で稼働中の風力発電施設では、現在も野鳥が風車の羽根に弾き飛ばされているようで、食物連鎖の上位にあるミサゴ(タカ科)の死骸も発見され続けています。私が関わり始めた10年前から現在まで、事業者は実効性ある対策を全く実施していません。と言うより、その気が全くないことがますます鮮明になってきました。“持続可能な野生生物との共存”、“生物多様性”を軽視しています。1年前にこのブログに掲載した「野鳥の衝突を防ぐには」のひとつも実施されていないどころか、検討すらされていないことが、国内各地の計画を見ればわかります。残念としか言いようがありません。
~野鳥の衝突を防ぐには~
その1.野鳥に大きな影響があると考えられる場所には計画しない!
残念ながら現在も、野鳥への影響など意に介していない計画が続々と出ています。保護団体や地元からの反発が無ければ事業者にとっては幸いで、反発が大きければ(特に自治体からの)さっさと計画を撤回するという事例が少なくありません。
その2.計画段階で、周辺の野鳥の生息状況から、立地についてよく検討する!
事業者はまず発電に適した風が吹くかどうか、送電に問題がないかどうか、工事に必要な林道などがあるかどうかなどが第一で、野鳥をはじめとする自然環境や、地元の人たちへの影響などは二の次のようです。洋上風力発電の場合は、漁業に支障がないか、航路の邪魔にならないかなどが第一で、海鳥や海棲哺乳類(イルカなど)、景観への影響などについては環境アセスで調査をし、評価するからということで、後回しです。その評価も「影響は小さい」の決まり文句で、そう言わないと計画を進められないからです。環境アセス審査会では「影響が大きいから計画は中止しなさい」とは言えないため、“事業ありきの環境アセス” “形ばかりの環境アセス” と批判されるわけです。自然環境を守ることができない環境アセスを早く変えなければ、いつまでも計画を巡っての紛糾は無くならないでしょう。
その3.野鳥への影響が少なくても、風車の数と配置を考慮する!
事業者は計画地の住民や保護団体から計画中止を求められると、とりあえず風車の数を減らすケースがよくあります。しかし、その程度では、近年危機意識が高まった住民の反発は抑えられなくなったようです。北九州市若松沖の25基洋上風力発電は、当初45基の計画でしたが、アセス手続きの途中で25基に減らしました(計算づくの削減では?と疑う向きもありましたが)。しかし、北九州市の生物多様性を象徴するような響灘海域に、風車を建てようとすること自体が問題であるため(そもそも誘致した北九州市に問題あり)、「事業を進めるべきではない」と、意見書で要求した経緯があります。今や風車の数を減らすだけでは、野鳥の衝突を防ぐことはできない感があります。風車の数を減らして野鳥への影響を軽減しようとするくらいの気持ちがあるのなら、計画中止にするほうが、賢明と言えます。
その4.風車に近づく野鳥をレーダー等で感知したら、回転を止める!
私たちの経験では、事業者は“たかが鳥のために”(と言ってるように感じます)風車の回転を止めることを固辞します。それでなくても発電稼働率が30%くらいなので、これ以上稼働率が下がれば建設費の元が取れなくなり、事業自体が赤字となってしまうからでしょう。さらに、野鳥を感知し、風車を止める装置の設置費用と維持管理費も高額のようで、“たかが鳥のために手間も費用もかけたくない”というのが本音でしょう。そんなときに自然エネルギーをごり押しに進めようとする国が費用の補助をしてやればいいと思うのですが、国も同様に“たかが鳥のために”.......なのでしょう。
以上、巨大な風車から野鳥を守るための実効性ある対策は実施してもらえそうにありません。野鳥に影響のある場所には風車を立ててはいけないというゾーニングも期待できません。かと言って、今の状況は容認できませんし、野鳥たちに犠牲を強いる電気は使わない!とも言えず悩んでしまいます。アリが象に挑むようなものかもしれませんが、野鳥を守ることは自然環境を守ることに繋がります。「野鳥と風力発電の共存」がかすんでいますが、微力ながら頑張らねばです!
(公財)日本野鳥の会が抗議(3月31日、日本野鳥の会ツイッターより)
「バードストライクなどネガティブな情報を出す人たちがいる。・・・一種の迷信に近い話」
今年3月21日に放送の「テレ朝」朝の番組で、日本で風力発電が進まない理由として、「バードストライクなどネガティブ情報を出す人達がいる。鳥が可哀想だと。でも、普通の建物でも起こるので、一種の迷信に近い話」と、事実誤認としか言えないような解説をしていたので、日本野鳥の会は3月29日に抗議文を「テレ朝」に送りました。
抗議文の内容としては、『コメンテータの解説が明らかに事実誤認であり、風力発電の風車に鳥類が衝突して死傷するバードストライクが世界中で発生しているのは事実です。一方、風車よりも建物などに衝突する鳥が多いのも事実だが、しかし、ここで問題視しているのは、風車への衝突は猛禽類を中心とした希少種でも多く発生していることです。そもそも風力発電の導入が進まないのは、鳥が衝突するというネガティブ情報が流されているからではなく、政策的課題によるものです。鳥類は生態系の中では高次捕食者であり、その鳥類に重大な影響があるということは、生物多様性全体にも大きな影響が出る可能性があるため、適切な立地選択等を行った上で、生物多様性に影響を与えない導入促進が必要と考えます。』
誤ったコメントがテレビで流されてしまいました。風力発電計画が中止に追い込まれるのは、今や野鳥への影響だけではなく、人への健康問題、災害発生の恐れ、貴重な景観や自然環境の破壊などを何とも思わない無分別な計画が理由でしょう。風力発電を促進する政府は、このような計画を見て見ないふりをしているようです。日本野鳥の会の抗議は当然です。このブログをご覧の皆様、日本野鳥の会への応援をお願いします。
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