少し前の話になりますが、日本のサイバーセキュリティ担当大臣が「私はパソコンを使った事が無い。」「USBってなんですか?」との発言について、揶揄したり否定的な見解を述べる人がいました。この大臣の能力や適性については全く知りませんが、この発言自体には問題は有りません。例えば、泥棒や殺人の経験が警察庁長官になる資格とは何の関係も無いように、パソコンの知識とサイバーセキュリティ担当大臣の資格には何の関係も有りません。
更に言うと、防衛大臣には戦車や戦闘機に乗った経験は不要ですし、武器の名称や使い方を知る必要は全くありません。寧ろ、知ったかぶりをする大臣の方が有害です。過去の防衛大臣の中で自衛隊経験者は数人しかいませんが、「文民統制(日本には軍人はいないので、意味不明な言葉ですが)」の関係で、逆に戦闘訓練の経験を問題視する野党がいるくらいです。
過去には「軍事オタク」の防衛庁長官もいて、日本は元寇以降、朝鮮半島人とは戦争をしたことが無いにも拘らず「韓国のGSOMIA破棄決定」問題に関して「わが国が敗戦後、(韓国に対する)戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にあり、さまざまな形で表面化している。」と発言し、無知を絵に書いたような人でも大臣になれました。
それはさて置き、コンピューターを含めて多くの先端技術は発展途上であるが故に、現在に於いて「最先端技術」と呼ばれます。五重塔やピラミッドなどは、完成した技術なので「最先端技術」とは言いませんが、これらを古い技術とは言えません。今でもピラミッドの建築方法は解明されていませんし、結果論としてですが、五重塔は地震で倒壊した例が無く、その耐震理論の解明は現在でも推論の域を脱してはいません。
現在ではパソコンは単なる道具でしかないので、人間が「意識的に使用」しなければ役に立ちません。最初は算盤の代わりに使われ、次に印刷、事務、家電、インターネット・・・・と発展してきました。そして、コンピューター技術がさほど発展していない発展途上国でもスマホの普及率が高くなっています。つまり、コンピュータの存在を意識しないで使える事が、本来のコンピューターの存在意義であり、パソコンを使いこなす人がコンピューターを知っている人とは言えません。
ロングタームキャピタルマネジメント(LTCM「長期資本管理ヘッジファンド」)は金融のプロが設立し、FRB元副議長やノーベル経済学賞受賞者二人が役員になり、コンピューターを駆使して運営しましたが、4年で破綻しました。これは、その道のプロだけで運営すると失敗するという良い例です。
最近でも専門家の失敗例があり、WHOの事務局長である「テドロス・アダノム氏」はマラリアの研究者で、公衆衛生の専門家です。今回の「武漢肺炎」は、
2019年
12月8日:原因不明の肺炎が発生。
12月30日:原因不明の肺炎の公文書がSNSに投稿される。
12月31日:WHOに報告される。
2020年
1月1日:武漢の海鮮市場を閉鎖。
1月7日:香港の保健機関は「重度の新型感染性病原体呼吸器疾患」と名付け、原因が新種のコロナウイルスと特定される。
1月9日:最初の死者を確認。
1月13日:中国国外で最初の陽性患者がタイで確認。
1月16日:日本で最初の感染者を確認。以降、多くの国で感染者を確認。
1月20日:人から人への感染を確認。ダイヤモンドプリンセス(DP)号が香港に向けて横浜を出発。
1月21日:中国政府は新型コロナウイルスによる肺炎を、伝染病予防法に基づく重症急性呼吸器症候群と同類の「乙類伝染病」に指定。
1月23日:WHOは「緊急事態宣言」を見送り。
1月25日:DP号から香港で下船した乗客の感染が確認。
1月31日:中国国外にも感染拡大の懸念が出てきていることからWHOは「緊急事態を宣言」。
2月1日:DP号が沖縄那覇港に寄港し、乗客が市内観光をする。
2月2日:中国国外での死亡者がフィリピンで確認される。
2月3日:DP号は横浜に戻り、今回の船内大量感染に繋がる。
2月2日:中国国外での死亡者がフィリピンで確認される。
2月3日:DP号は横浜に戻り、今回の船内大量感染に繋がる。
1月20日に、新種のコロナウイルスが「ヒト-ヒト感染」をする事が確認された時点で、WHOが「緊急事態」を宣言していれば、クルーズ船の感染乗客の早期分離が可能になり、大量感染を防げたかもしれません。この事も、「専門家」がトップになる事が、必ずしも有効とは言えない事を示しています。