おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

作曲家として致命的な難聴を患ったとき、自身の内面の声がより聞こえ始めたベートーヴェンが作った曲を聴いて

2024-05-21 06:23:00 | 日記
フランス革命は、政治的事件であると同時に、思想的事件でもあった。

簡単に言えば、それは、「個人」を構成単位とする近代国民国家の誕生である。

つまり、ただの暴動・反乱ではなく、旧体制から個人を解放せよ、という革命の思想が伝播する可能性があった。

だから、周辺国家は「フランス革命を否定し、潰すこと」で団結し、軍を送りこんだのであるが、これに対してフランス側は、ヨーロッパ史上初の「国民軍」でこれを迎え撃ったのである。

1972年、ヴァルミーの戦いでフランス国民軍を見たゲーテは有名な
「この日、この場所で、新しい世界史が始まる」
と記したという。

ゲーテは国民軍の思想的意味を直感したのである。

革命はやがてナポレオンの登場を生むが、コルシカ生まれの将軍に率いられたフランス国民軍の大進軍は、「個人」を解放する
思想の伝播でもあった。

若きヘーゲルはこの思想運動に熱狂し、自らの難解な観念論哲学を大衆にわかりやすく説き、ドイツにおける啓蒙運動に邁進した。

こうした、思想の大転換は、芸術家にも影響を与えずにはいられない。

ヘーゲルと同年齢のルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827年)も例外ではない。

ベートーヴェンの生涯は、難聴となり、自殺を考え「ハイリゲンシュタットの遺書」を書く1802年頃を境に、初期と中期とに分けて考えることが一般的である。

初期のベートーヴェンは、モーツアルトやハイドンといった先輩作曲家に忠実に、すなわち旧来の音楽形式に真面目に従って作曲を行っている。

しかし、作曲家として致命的な難聴を患ったとき、彼は自分の内面に耳を傾け始める。

この体験は、当時の社会情勢とも相まって、ひとりの人間ベートーヴェンが生き、作曲する意味を根底から考え直させたようである。

「新しい世界史が始ま」ったのならば、そこに生きるの新しい人間に相応しい、新しい音楽が、新しい形式が必要なのだ。

そう心が決まると、もともと気性の激しいベートーヴェンは、猛然と新しい音楽を書き始めた。

1802年から10年ほどの間に次々と傑作が生み出されてゆく。

従来の古典派の音楽形式は吟味され、拡大再構成され、巨大な「ソナタ形式」となった。

交響曲第3番「英雄」や第5番「運命」で、私たちが耳にするのは、ベートーヴェンが苦悩と努力によって鍛え上げた新しい時代の形式なのである。

交響曲は、多くの聴衆、すなわち、新時代の大衆に向けて書かれたが、パトロンである旧時代の貴族向けにも作品を書き、献呈している。

しかし、そこにもベートーヴェンの、新しい精神が、活き活きと躍動している。

「ワルトシュタイン」はベートーヴェンのパトロンの貴族の名で、彼に献呈されたために、このように呼ばれている。

とはいえ、ワルトシュタイン伯爵に献呈された曲は、たくさん在る。

その中で、特に名前が冠せられているのは、この曲の特異性、重要性のためであろう。

打楽器的な和音の連打で始まる第1楽章は、ベートーヴェンが当時完成させつつあった、巨大なソナタ形式の実験である。

意外な転調、展開を見せるが、何よりもその音楽自体が堂々とした自信、風格を漂わせ、さらに優美ささえ兼ね備えている。

第2楽章も当初長大なものが用意されていたが、あまりにも全体が長すぎてしまうので、この楽章は外され、代わりに現在の短い、内面に向き合うような楽章が配置された。

しかし、結果的に、これによって斬新な、それまで誰も聴いたことのないピアノソナタの姿が生み出されたのである。

それは、他人に向かって演奏する、というよりも、むしろ、孤独のなかで自らと対話するような、そのようなベートーヴェンの思索がそのまま音となって、それが連なったような音楽であるように、私は、感じる。

孤独な思索というのは、夜の闇に似ているのかもしれない。

しかし、明けない夜は、ない。

やがて、曙光が差してくるかように明るい旋律とともに、第3楽章が始まる。

朝霞のなかから、壮麗な城がその威容を放つかのように、音楽は、その壮大な姿を徐々に現してゆく。

さらに、第1楽章の主題も回帰して来るのだが、ここで、曲全体のドラマ性が明確になる。

すなわち、第2楽章という孤独の中から、再び人間が輝かしく、自信に満ちて、立ち上がるという、再生のドラマなのである。

そして、この再生は、人間ベートーヴェンの再生のみならず、新しい時代の新しい人間の誕生であるように思えるのは、私だけであろうか。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

数日間、急激な暑さと高めの湿度にバテ気味になっていました^_^;

皆さまは、体調、大丈夫でしょうか?

今日から、また、いつものペースの日記に戻る予定です(*^^*)

また、よろしくお願いいたします( ^_^)

体調管理に気をつけながら、

今日も、頑張り過ぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。


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