おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

シューベルトとマーラーの「死と乙女」から

2024-07-20 06:53:36 | 日記
フランツ・シューベルトは、美しい旋律を保つ歌曲の数々によって有名であるが、そこで多く歌われるのは、この世に居場所がない青年特有の精神であり、失意のうちに世を去る哀しみであり、死に平安を見出さざるを得ない心の揺らぎである。

シューベルトは、歌曲「死と乙女」を作曲した際、
死神を拒絶する乙女の
「イヤよ!こっちに来ないで!私はまだ若いのだから!」
という台詞に対し、
近づいてゆく死神の
「乙女よ、怖がることはない。
私がお前にもたらすのは、平安なのだよ」
という台詞に、恐ろしくも甘美な旋律を与えたのである。

この死神に付された旋律こそが、第2楽章の主題であり、弦楽四重奏第14番が「死と乙女」と呼ばれる所以である。

シューベルトは、夭折した天才であった。
特に後半は、常に死を意識せざるを得なかったであろう。

シューベルトのみならず、人間は、
「人はみな、しかも必ず死ぬ」
という簡単明瞭であることを、なかなかわからない、否、わかりたくない。

しかし、シューベルトのような芸術家と呼ばれる人間は、単に技術に長けた人間ではない。

芸術家たちは、
「自分はやがて死ぬ」
という切実で狂おしく悩ましい問題を昇華しようともがき、死など忘却して生きている人間の喉元に、
「あなたもやがて死ぬ」
という現実を鋭利な作品を以て突きつけずにはいられない熱情を秘めているようである。

シューベルトが、「死と乙女」の旋律を中心に、全楽曲が短調という異様ともいえる弦楽四重奏を書いたのは、1824年頃である。

それから3年後、シューベルトが敬愛する大作曲家ベートーヴェンが亡くなった。

ベートーヴェンの葬儀に参加した後、友人たちと飲みに行ったシューベルトは、酔いつぶれ、
「次に死ぬ者のために乾杯!」
と叫んだ。

シューベルトが亡くなったのは、その翌年のことであった。
......。

それから80年ほどの時を経て、ある作曲家にして指揮者が、シューベルトの「死と乙女」に感動する。

彼もまた、「人はやがて死ぬ、必ず死ぬ」という切実で狂おしく悩ましい問題を昇華しようと試みていたからである。

そして、
「これは、弦楽合奏に編曲すべきだ」
と決意する。

このようにして、グスタフ・マーラーは、単純に演奏する人数を増やすのではなくて、恐るべき力をもって迫ってくる死と、しかしながら、今、実際に私たちが生きているという喜び、これらが絶え間なく交錯する「死と乙女」の世界を、きわめて細かい楽想・演奏指示、弱音器の使用指示を加えることによって、原曲よりも、はるかにドラマチックなものにしたのである。

「死」という誰もが不可避な問題に向かい合い、向かい合う中で生じる切実で、狂おしく、悩ましい感情を作品に昇華しようとした、ふたりの偉大な作曲家の心が、時空を超えて感応して生まれた合作、それこそが、弦楽合奏版「死と乙女」なのである。

この曲は、4楽章構成であるが、第3楽章は、第4楽章への導入的性格が強いため、実質的には3部構成である。

つまり、激しい情念が渦巻く第1楽章、「死」の変奏曲である第2楽章、死へと追い立てられてゆく、第3、第4楽章という構成である。

第1楽章は、激しく悲劇的な第一主題で始まり、不安かつ不穏な音楽が超自然的な推進力をもって展開されてゆく。
第2主題は対照的に穏やかでシューベルトらしい歌曲を思わせる優美な旋律である。

音楽は、このふたつの主題が激しくせめぎ合いながら展開してゆく。

第2楽章は、弦楽合奏版「死と乙女」の中心である。

死神の
「私の腕の中で穏やかに眠りなさい」
という旋律を主題とする変奏曲であるが、変奏されてゆく中で、
死に怯える乙女の心や、逃れられない死という厳しい現実、苦悩から逃避して見る美しい白昼夢など、死をめぐる人の心の動きが、余すところなく描かれていく。

そして、最後には死神の腕の中で、安らかに、眠るのである。

第3楽章のスケルツォは、目を覚まさせるような激しい3拍子のリズムで始まり、死は優しくなどなく、苦しくつらいものだということを思い出させる。

中間部は夢を見るように優美であるが、それもまた、冒頭の激しい音楽で断ち切られる。

第4楽章は、何かに追い立てられるように終始気ぜわしく、感情の起伏もきわめて激しい。

破滅へと足を急がせるような音楽は突如として得体のしれないような高揚感に包まれ、あるいは、悪魔的な展開を見せもする。

そして、音楽はほとんど狂乱のうちに、最協奏で終わりを告げる。

この曲を聴くとき、「死」 を見つめていながら、より人間の「生」について触れることが出来るように感じるのは、私だけであろうか。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

毎日、暑いですね^_^;

体調管理に気をつけたいですね( ^_^)

今日も頑張り過ぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。

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昨日の日記に出てきた、代官山のお洒落すぎる本屋さんで、著者の先生方のトークイベントがあり、行ってきたのです!!

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