合格発表から半月後、入学式に出席した。
同期は私を入れて3人。
みんな違う部屋の子だ。
しかも男の子。
つまり、私の部屋には院生は私1人きりなのだ。
※中堅薬学部は院生が異様に少ないのだ。
この日から、大学院生1年生としての日々が始まった。
指導教員は学部生の頃と変わらず助教授。
しかし、部屋のトップは教授だ。
『1週間に2本、論文発表してね』
薬学部生は国家試験に受かるために大学に通っている。
論文を読んだことがないわけじゃないが、まずなんの論文を読んだらいいのかもわからない。
ましてや英語論文なんて読んでまとめてスライドを作って…となると数日かかる。
助教授がちょっととばし過ぎじゃないかと言ってくれたが、方針は変わらなかった。
私は教授に直談判した。
『まだ慣れてないから、せめて2週間に1本にしてくれ。』
かなり嫌な顔をされたが、なんとか許可を得た。
このことを言われた日から、論文、論文、論文、頭の中も論文、論文、論文…
23時近くまで研究室に残って論文を読んでいた日もあった。
部屋に先輩もいない、同期もいない…
きっと先輩や仲間がいたら、この壁も乗り越えられていたのかもしれない。
しかし、ここには私1人…
1人ぼっちだった…
『こんな論文も読めない自分なんて、院生として向いていない、自分はダメな人間なんだ…』
また自己否定が始まる。
『生きている意味はあるのか?』
だんだんそう思うようになってきた。
あのとき買ったロープの存在を思い出す。
『こんな日々が続くなら死にたい…』
自殺願望が芽生える。
孤独な日々と論文に追われる日が続いた。
壊れていく心の声も聞こえる。
『…辞めたい』
薬局も辞めて、また辞めるのか?
辞め癖がついているだけじゃないのか?
辞めることに抵抗があった。
しかし…
ある日、ついにロープに手をかけてしまう。
首を絞めた…
薄れていく意識の中…
『死にたくない!』
心の声だった。
あのとき死んでいれば…もう苦しまずに済んだのかもしれない。
あのとき途中でやめたことが正解だったのか…今でも疑問だ。
このとき、私は大学院を辞めようと決めた。
死ぬか、辞めるかの2択だった。
そう決めた次の日、通っている心療内科へ診断書をもらい、大学へ提出した。
このときも、今思えば、誤った選択をしてしまった。
療養に入ればいいのに、変なプライドからか、『働いてないといけない』という考えが頭に浮かんだ。
そこで就活をし、某大手食品メーカーの検査部門に内定をいただいた。
ここで、私がちゃんと病気を治そうと決意する出来事が起こる。
次回、某大手食品メーカーでの出来事を書こうと思います。