冬桃ブログ

願わくば星の下にて……。

 S村滞在中、築170年という古民家に
お招きいただいた。
 建物も囲炉裏でいただいたご馳走も素晴らしかったが、
圧巻は帰りしなに見た満天の星空。
 天の川もくっきりと見えた。
 
 私はいつも、自宅のベランダから狭い星空を見上げている。
 カシオペアやオリオンのように、ごくごくわかりやすい
季節の星座しか見えない。

 でもここは見渡す限り、隙間もない星々の競演。
 茫然と見上げているうちに、山の端にかかっていた三日月が
少しずつ尾根の向こうに沈んでいった。

 20代の後半、イラクの砂漠で見た星空を思い出した。
 夜空が星のドームになって砂漠を包んでいる。
 この星々だけを頼りに、キャラバンが遠い旅をしたのだ。
 占星術はメソポタミアから生まれた、という説を、
後年、なにかで読んだ。
 あの光景を思い出すたびに、納得して頷く。

 最近、大佛次郎のことを書く機会があった。
 当然ながら大佛の兄で「星文学者」と呼ばれる
野尻抱影を思い出した。



 ずっと昔から、この本は私の愛読書。
 若いころは星座もたくさん知っていた。
 でもごくわかりやすい星座しか見えない都会暮らしの中で、
どれがなにやらわからなくなってしまったのが悲しい。

 西行法師は「願わくば花の下にて春死なん」と詠んだ。
 ここでいう「花」は満開の桜。
 私は「願わくば星の下にて冬死なん」を夢見ている。
 

 
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