5日ニューヨークタイムズに掲載された記事を巡って、トランプは勿論
政権内、さらにはワシントン中が大荒れのようだ。ここをどうぞ。
最初ふと思いついたのは、つい最近死亡したマケイン上院議員の葬儀のこと。
マケインの葬儀では特に長女のした弔辞はトランプ大統領に対する痛烈な批判・
攻撃だったという。
それ以前に共和党の上院議員が共和党の大統領であるトランプを拒否し、
民主党の大統領であるオバマを葬儀に招待し、かつ弔辞まで依頼していたことがある。
オバマは自らが大統領選で戦った(そして負けた)相手であった。
死者に対する敬意ということがあったのか、党の大統領候補者であった者が
自己の所属する現職の大統領を公然と侮辱し、それほど批判はなかったのである。
だから、多分その流れが影響しているのではないかという思いが一瞬頭をかすめたのである。
記事を読んでみて間違いないと思った。
匿名さんはPRO民主党、そしてアンチ・トランプではないかと思った。
その理由は後で取り上げるが、We have sunk low の 「low」と
「We have sunk low with him and allowed our discouese to be stripped of
civility」という文章全体の含意からである。
2016年の選挙期間中、トランプを批判してミシェル・オバマが使っていた表現
「When they go low, we go high」が直ぐに連想されたからである。
匿名さんは、トランプ政権下で、既にアメリカは「より安全に、より繁栄・豊かになった
(safer and more prosperous)」と認めている。
しかし、問題は、何をなしとげたかではないという。
原文のまま。「We have sunk low with him and allowed our discouese to be stripped of
civility」ということである。その前には「what we as a nation have allowed him to do to us」
とあることから判断すると、この匿名のエリートさん、エリートであることは間違いない、は
「トランプのせいでみじめになり、礼儀正しさ(言葉)をなくさせられた」そして「そういうことは
させない」というものと思う。
そして、トランプの成功(規制緩和や税制改革など)はトランプタイプのリーダーシップ・スタイル
でなくてもできたはずという。
トランプタイプのリーダーシップ・スタイル」とは「impetuous, adversarial, petty, and ineffective」
とある。
確かに、トランプは激しい気性であり衝動的であり、敵対的であり、些細なことに拘り、非効率
かもしれない。トランプは政治的に素人なので基本的に非効率だし、その通りである。
しかし、この分析自体間違っていると思う。
トランプの成功はいずれもトランプが公約したものである。トランプは公約に拘っている。
政治家は、大抵、当選後は公約など気にしないものである。勿論、簡単に実現できるものは
するかもしれない。しかし、いろんな障害があれが諦める、そして伝統的・慣例的な手続き
問題がその理由であれば、それほど好都合な逃げ道はない。
ところが、トランプは慣例や手続きなどお構いなしである。何が何でもやり通す。そのためには
ツイッターで過剰口撃をかける。決してお上品ではない。伝統や礼節に欠けることはしばしばである。
トランプにとっては公約実現が最優先、公約ファーストなのである。
トランプの欠点とも言える性向がプラスになっている、いやあるからこそ、突破できていること
は事実である。
トランプの激しい気質と公約ファーストがあるから成功したのである。
勿論、成功するにはこの組み合わせしかないのかどうか、それはわからない。
政治は結果である。結果は手段を正当化するともいう。トランプの場合、結果は公約を実現する
ものだった。そういう意味では非難されることはないはずのもの。
トランプがダメならだれがいるか。
この匿名さんが尊敬しているように見えるきれいごとのマケインではないし、また
ヒラリーでもない。ほかには今のところ見当たらない。
勿論、もう少し、お上品であってほしいとは思うであろう。しかし、お上品になれば
決して、公約の実現はない。二者択一である。
この匿名さん、トランプが成功したので、安心して、自分は上品なんだと言いたいのかもしれない。
この世の中、理想通りにはいかないのである。
一番大事なことは、その時代に相応しい指導者を持つことである。
そして時代によってニーズは異なっている。
今のアメリカに必要なのはトランプタイプということなのであろう。
というのは、国民が選んだのだから。
匿名さんのような多分比較的恵まれた階層の人には、上品さが問題かもしれないが、
過半数の国民は上品さ(カッコよさ)よりも実質を求めたのである。
人間、まずは生き延びることである。カッコよさや上品さはその次である。
いい悪いは別にしてである。
この匿名さん、トランプは amorality だと非難する。
政治というのは、道徳とは異なる次元にあると思う。
amoralというのはモラルには関心がないということである。immoral不道徳とはことなる。
文明の発展段階により、あるいは、個人レベルでも、豊かさには段階がある。
段階により、経済的なものから精神的なものに重心が移るものである。それが現実だ。
匿名さんは、トランプはプーチンや金正恩のような独裁者を好むという。そして、同盟国
を認めようとしないという。
しかしながら、トランプは国民の選挙によって選ばれている。
民主主義によって選ばれているということである。
今、世界的にいわゆるポピュリストが大きな流れになっている。
ということは、普通の人たちが政治の世界で声を大きくしたということである。
サイレントマジョリティーというように普通の市民は普段は生活に追われ
政治的に発言する余裕がない。しかし、本当に、自分達の生活に危機感を
持てば立ち上がるのである。しかも、できると思えば立ち上がるのである。
政治の世界(どこの世界も同じだが特に)では好きか否かなどどうでもいいことである。
必要なことをやるガッツがあるかどうかだけである。そして結果を出すことである。
国民が自らの望む程度に豊かになり、もっと上品な指導者を望むようになれば、
そのときトランプが国民の要望に応えられなければ、国民はトランプを選ばないはずである。
それが民主主義である。
トランプを選び、そのトランプが公約実現にまっしぐらで、しかも成功していると
すると、それこそが民主主義なのである。
ミューラー特別検察官がロシア疑惑の捜査をしているのも、選挙は民主主義の根幹である、
その選挙で選挙民の意思が操作されて、真意が反映されないことがあってはならないからの
はずである。
理想と現実の乖離。それが現実である。
常に理想に目を向けておく必要があるが、同時に常に現実に足を置いておく必要がある。
現実は矛盾にみちた世界である。
キチンと説明がつかない。だからかっこよくもない。
理想に向かって進むためには、スタート点の現実の中からその道筋を見つけるしかない。
当然、その道筋がかっこいいわけなどないのである。
トランプも慣れてくれば、少し体裁を考えるかもしれない。
でも、年齢的にもう遅すぎるかもしれない。
いずれにしてもこういうどうでもいい記事をしかも匿名で公表するなどは百害あって一利なしである。
現実はかっこよくない。が改革は現実を見据え一歩一歩進めるしかない。
最近、現実を見据えるということに、たいへん関心がある。