陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「天使と悪魔」

2011-04-10 | 映画───サスペンス・ホラー
えっ、この映画ってついこの前封切りされたばかりなのに、もう地上波放映するの?!などと思うことが、最近とみに多くなったTVの映画事情。しかもたいがい視聴率稼ぎのビッグタイトルばかり。
映画「ダ・ヴィンチ・コード」の続編として話題になった「天使と悪魔」(原題:ANGELS & DEMONS)は、じつに2009年作でした。二年も前だったのですね。TVといいましても、BSやらスカパーやらではすでに放映されてきたのでしょうね。
ちなみに事前に真犯人らしき人物について聞き及んでいたので、サスペンスの楽しさは半減してしまいました。以下、ネタバレ気味ですので要注意。

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ローマ教皇が急逝し次期教皇選挙(コンクラーベ)に湧くヴァチカン市国で有力候補(プリフェリーティ)と目された四人の枢機卿が誘拐される。さらに時同じくして、欧州原子核研究機構が生成した恐るべき破壊力を誇る反物質のポッドも何者かに盗まれてしまう。
ハーバード大学宗教象徴学の権威ロバート・ラングドンはヴァチカンから招かれて、教会の護衛にあたるスイス衛兵隊隊長リヒター、反物質の開発者の娘である科学者のヴィットリア・ヴェトラ、そして教皇の侍従(カメルレンゴ)であったカルロとともに捜査にあたることに。ラングドンの巧みな推理の裏を掻いて、枢機卿たちが連続して予告殺害されていく…。

今回も事件の裏に浮かび上がってくるのが、謎の秘密結社。
ガリレオら科学者が組織していたイルミナティの残党が、かつてカソリック教会から激しい弾圧を受けたことを恨んで復讐を企てらしい。間一髪の差で殺害が行われることに、イルミナティに属する裏切り者がヴァチカンに潜んでいるのではないかと内部犯行説が浮かび上がります。とすると、おのずと「ダ・ヴィンチ・コード」と同じコースを辿りはじめるわけですね。

前作と比べると、前半部にあったキリスト教云々の因縁絡みが後半になってくるとまったく意味がなくなってしまうような構成なんですよね。「天使と悪魔」というロマンチックなタイトルに暗示されている宗教と科学の反目と融合という、原作者の意図はわからぬまでもないけれど、抽象的すぎるきらいがあります。事件の謎解きに奔走するラングドンの活躍も、推理の部分が衒学的なこじつけの連続ばかりで、キリスト教の基礎知識がないビギナーにはちんぷんかんぷん。いくたび眠気に襲われそうになったことか。

衛兵隊のある人物が怪しいとにおわせておいて、真犯人はやはり身近にいたというパターン。真犯人が教皇の椅子を狙っていたのか、それとも純粋に科学よりも上に立つ宗教の優位にこだわってなのか、そのあたりもいまいち判じがたい。しかも、最期は役者に華を持たせたような終わりでした。もっとこう人情的なやりとりがあったらまだ入れこめたもしれませんが。捨て身のヘリコプターのシーンは英雄的行為とそのあとにくる真相の暴露の緩急をつける重要な場面で演出もよかったのですが、自爆で軌道を反らすというのが鉄腕アトム以来のお馴染みのパターンだなどと冷めた視点で見てしまったり。

サン・ピエトロ大聖堂、システィーナ礼拝堂などなどヴァチカンの名所がふんだんに出てきますので、さしずめ、日本の観光地サスペンスドラマのノリではないかと思われます。しかし、名所を爆発したりなどしないだろうと斜に構えた見方をしてしまうために、すわヴァチカン破壊か?!の緊迫感が保てないのですよね。

監督は「ビューティフル・マインド」のロン・ハワード。
出演はトム・ハンクス、アイェレット・ゾラー、ユアン・マクレガーほか。
原作は製作にも関わっているダン・ブラウンの同名小説。原作ではこちらのほうが発表が先だったんですね。

(2010年4月9日)

天使と悪魔 - goo 映画

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