陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

てのひらに収まる読書が嬉しい

2018-02-28 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

いまも受験で使われているのかわかりませんが、その昔、『豆単』というのが流行りました。
学生手帳ぐらいのサイズの英単語帳のことです。私も使っていたことがあって、それは旺文社の『和英基本単語熟語集』。大学入試用の4000語が収録されています。学校に教科書を置き去りにするとその日の復習ができませんから、毎日、片道1時間の距離を自転車で往復したときの、鞄の重さは今でも忘れられません。大学時代は、もっと大きな辞典が欲しくなって、見栄を張ってぶあついオックスフォードの英英辞典なんかをおおきな鞄に入れて持ち歩いていたりしました。たぶん、いまのスマホに慣れた若い方から見れば、阿保ちゃうかと思われるに違いありません。

そうです。本の重さが、厚さが嬉しい。ずっしり。
そんな偏執的な読書マニアの征服欲的な概念を打ち破ったのは、スマホです。箸より重いものは持ちたくないとまではいきませんが、スマホを使いだすと、もう重ったるい本が嫌です。ハードカバーの本なんて、昔は格調高くていいと拝むような気持だったのが、もう最近は蛇蝎のごとく毛嫌いするようになりました。文学全集の一冊には、上下二段でぎっしり詰まって読み応えありと思っていましたが、ほとほと嫌になります。

最近、企業小説の名手である池井戸潤さんの話題作『花咲舞が黙っていない』『銀翼のイカロス』が同時に文庫で発売されました。どちらも単行本を経ていないようですが、売れ行きは好調だとか。最初から文庫で売り出しを許した作家さんには、頭が下がります。社会のニーズをよくわかってらっしゃる。さすが経済学部卒。

小説はある程度重版がかかれば、文庫化もされます。
単行本のほうが高い分作家さんへの印税はいいのですが、文庫化されれば同じ作品でさらに収入源になります。読者にとっても求めやすい値段で買えるわけですし、嬉しい。

小説に限って言えば、私は単行本ならば図書館で借りるか、古書店で見つけて済まし、気に入って手元に置きたければ新しい文庫版を買っています。古書店で単行本を買っていたけれど、わざわざ、文庫版に買いなおしたものもあります。気に入った本はくりかえし読みますから、やはりきれいな状態で保管しておきたい。手軽に持ち運びもしたいですし。

正直言えば、最初から文庫版で出してほしいもの。
印税率を上げれば、作家さんの生計も苦しくなくて済むのではないでしょうか。出版社さんには、もっと読者が買いやすい本を考えてほしいですね。

次回は、これとは逆に、大きい本の話をしましょう。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。




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