読書好きならば、本は気持ちのいい状態で買いたいもの。
今回は本屋さんについてのお話。
私の行きつけの書店はいくつかある。
ひとつは徒歩圏内にある小さな個人書店A。同地域内にあるショッピングモール内の中堅ブックストアB。空き家近くにある全国的なチェーン店C、そして県庁所在地中心部の百貨店内にある紀伊国屋書店。
紀伊国屋は品ぞろえは豊富で中心地へ通ったときはかならず足を運んでいたが、大学病院の帰りに救急車で搬送される騒ぎを起こしてしまい、以来、なんとなく避けてしまっている。都会ならともかく、田舎の大型書店は売れ筋本は何冊も平積みするわりにマイナー本は置いていないこともあって、足を棒に振ることも多い。
チェーン店Cはポイントカードもあって、資格のテキストや法律ビジネスやパソコン関連の書籍はかならずここで求めていた。
ところが、昨年あたりから経営方針が変わったのか、文具雑貨屋エリアが拡大し、魅力ある本棚ではなくなった。それでも応援しようと取り寄せ本をお願いしたが、店員さんが多忙なせいか精算時に不愉快なことがいくつか重なって、すっかり遠のいてしまった。
中堅ブックストアBは自転車で行ける範囲で、私がいつも欲しい手帳が置いてあるし、雑誌も手に取りやすい。だが、いかんせん、ビジネス関連の品ぞろえが大してよろしくない。
最近、愛用しているのはA個人書店だ。
過去の勤め先である会計事務所の顧問先でもある老舗書店で、自社ビルかつ学校などへ教科書を卸しているせいか、顧客が店内にさほどいないにもかかわらず、なぜか経営が続いている。量販店が近いことも奏功しているのだろう。
この書店のいいところは、まさに客足が少ないところで。
たとえば漫画「姫神の巫女」の掲載雑誌を買うのにもずいぶんお世話になった。入口すぐ近くのレジにそうしたマイナーで癖のある(爆)漫画類が集中しており、私のように人目を避けて趣味本をすぐ買いたいタイプにはうってつけなのだ。しかも袋がいらないといえば、心得顔で包装紙できちんと包んでくれたりもする。
以前、ウェブ漫画の単行本を中堅ブックストアBで取り寄せしたところ、雑な扱いをうけたものだが、次巻はこの書店で予約したところ、一冊だけにもかかわらず快く引き受けてくださった。めったにこない来客だったため大切にされたのであろう。
個々の店主はご家族経営でみな私よりも年上とみえる。
そのため、近年の大型書店のような、若者向けのチャキチャキした感じの本があまりなく、居心地がいいのだ。本の量も適正量である。あまりに広いフロアの書店にいくと、本棚をブラウジングするだけで疲れてしまい、情報量に酔ってしまうのだ。しかも郊外の大型店舗ほど万引きが多いのか、頻繁に棚を移動させるので探しづらいうえ、売れないままの旧版の本を平然と書棚に並べていたりするのだ。イデコ関連の本がそうだった。ブックオフで買えば割安で買えたはずなのにと。
だが、年間通じてよく通うのは、ブックオフなのかもしれない。
美本がお買い得価格でゲットできるのも大きいが、何年か前の型落ち本を拾いやすいからだ。ベストセラーになったニーチェの言葉などもここで集めた。カラマーゾフの兄弟文庫本全巻もそうだった。
個人書店Aはお目当て本の予約ついでにふと棚をのぞくと、なんと近日発売だった、さいとうちほ先生の「輝夜伝」最新刊があるではないか!早速レジへ直行。じつは、さいとうちほ先生の漫画、売れ行きがいいのか、それとも入荷が少なすぎなのか、行きつけ店舗ではすぐに買い求められないことが多かった。くわえて、この作品、書影がかなり色っぽいために、若い女性の店員さんに会計をしてもらうと変な目線を感じることも多いわけだ。レディコミの大御所だから、知らない子も多いのだろうけども、けっして十八禁本ではないのに。
日本の漫画の発行品数はかなりの数にぼるであろう。小さな本屋だから同じ出版社で同一レーベルのすべての単行本を並べられはしないはず。となれば、これは店主さんが好みで取り寄せたに違いないのだ。そんな好みの合致につい嬉しくなって、この個人書店を応援したくもなるのである。
新刊の本で著者が知らないものはどうしたって、数ページはめくって検分してしまう。そうするとやはり本は傷むので、そもそも本屋で現物をじっくり調べてから…という購入にはなりにくい。漫画ならばシュリンクしてあるから、なおさらだろう。タイトルを控えて、ウェブで下調べしてから再来店ということもあるのだ。もうそれならば、近場で予約できるか、アマゾンでポチったほうが早い。
目下の悩みは、個人書店であるがゆえに、夕方早くに閉店、土曜は半ドン、日曜祝日などはお休みであること。つまり会社帰りのアフターに通うにはなかなかつらい。ただ歩いていける距離で予約ができるのは実にありがたい。個人店だから長丁場で立ち読みはしづらいが、買う本が決まっていて、ポイントを気にしないのならいいわけだ。
体力が落ちているので、あまりにもだだっ広い本屋は入れない。
最近は図書館通いも月イチに減らしているし、図書館で読んで手元に置いておきたいと確信した本か、作者の作風に信頼しているものしか入手しなくなった。
書店の売れ行きが悪く、ネット通販が増えているというのも、立読みで状態が悪い本を定価で買いたくないだけではなく。店員さんの接客態度やお店の売り場の良し悪しで相性が決まってしまうケースもあるのかもしれない。
中堅ブックストアBはかつては常連客だったが、純粋な書店から複合型のショップへ変わってからは店員さんが入れ替わってしまい、選書の方針も変わってしまったのだろう。女性や若者向けを意識した棚構成になっているのは、顧客のターゲットをそこに絞った戦略なので仕方がないと言えるのかもしれない。かつてはかなりお金を落とした身としては、寂しいのではあるが…。
個人書店Aが廃業しないことをこの先祈るばかりである。
ただ、困るのは、こうした店舗は顔を覚えられると読書傾向が記憶されてしまうのでいささか厄介ではあるのだが…(苦笑)。
(2023/10/15)
読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。