今回は、労働者ならば気になる通勤交通費のお話です。
昨今はガソリン代も高騰していますし、一部の方には、若干耳に痛いお話になります。
私は以前ある期間限定の派遣社員をしていたことがあります。
そのお仕事を受けた理由は、業務内容もさることながら、家から近くて自転車もしくは徒歩で通えることでした。
ところが、就業中に仲良くなった中年女性から、ある日、こんな厭味を言われたのです。万葉さんはいいよね、自動車で遠くから来なくていいから、と。実際、その職場には自転車で5分もあれば辿り着けるぐらいでした。近すぎたので、お昼休憩時も帰ろうかと思いましたが、また戻ってくるのが嫌になりそうなので、さすがにそれはしませんでした。
そのお仕事の同僚たちは、だいたいマイカー通勤でも、同市内のメンバーがほとんど。
毒づいたその女性だけは、やや離れた自治体から通っていました。しかも、燃費の悪そうな大型車に乗ってきていたわけです。だったら、軽四に買い替えたらええのに、としか思いませんでした。厭味を吐くから、同情なんてしてやりませんでした。バブル世代以上の方って、普通自動車でないと負け組だ、みたいな謎の信仰がありますよね。見栄より実利をとる私からしたら理解しがたいです。
私は派遣での勤務歴があまりなかったので知りませんでしたが。
2020年4月には、派遣社員にも交通費が支給されることになりました。つまり、一般的に高時給に思えるけれども交通費をさしひけば、時給がパートレベルの待遇だったのがそれまで。これが改善されたわけです。賞与もなく昇給もないまま働かされる雇用状態からしたら、当たり前といえば当たり前なのですが。この交通費分はもちろん、派遣元が派遣先に請求するようです。
ところで、私はこれまで、マイカー通勤をほぼしたことがありません。
実は基本、自転車通勤だけれども、雨の日だけ臨時に自動車通勤という形にしたこともありました。その場合、月極の駐車場代だけは支払いましたが、交通費は頂いていませんでした。そして自転車で通えないような職場は、JR通勤で定期券を支給されていたわけです。もちろん駅から徒歩10分ぐらいのところばかり選んでいました。ですので、マイカー通勤者がガソリン支給であるという事実も、そこではじめて知りました。
ある派遣会社のマイカー通勤手当は、1キロあたり単価14円。ガソリン基準価格が170円ぐらいでも、なんと1割以下です。
片道距離の二倍だとしても、20キロある職場ならば680円。冬の寒い朝や夕方にヒーターをつけていれば、すぐガソリンはなくなってしまいます。なおネット上にはガソリン代計算サイトもありますが、やはり足が出る値段のように思われますね。
しかもこの距離は直線での計測らしいです。
実際は、市街地中心部などは道路が入りくんでいますし、信号も多く、渋滞もあるので、かなりの時間、ガソリンを消費するでしょう。
そうなれば、いくら交通費が支給されるとはいえ、マイカー通勤は考えものですよね。
自動車にはガソリンの他に、自動車保険料もかかりますし、当然ながらオイル代やらもかかりますよね。冬ならばタイヤのスタッドレスチェーンの装備も必要になりますね。
日雇い派遣の仕事で、たまたま1日だけ遠方から通ったが、中古車のベルトが切れてしまいJAFを呼ばねばならなくなったという話も聞いたことがあります。
そうなると、何のために働きに出たのかわかりませんね。車の修理代もかなりお高いですから。
修理代がかさむ中古車に乗っていると思いがけず出費が増えることになりかねない。
私も車好きの知人から、中古なら安いよ、馴染みのディーラーを紹介してあげるよとけしかけられましたが、買わなくて正解でした。だって年間の維持費を考えると、家で仕事をしていたほうがマシですから。単発のバイトで日替わりで現場が変わるような仕事は、労災もなく、社会保険の加入もできないですから、長く続けたくはないですし、あちこち飛ばされるうちに事故に遭うのも怖いです。
派遣歴が長い方いわく。
駐車場代だけは、派遣会社が契約してしてくれるので現物支給であるものの。
その駐車場が就業先からべらぼうに遠くて、片道徒歩30分近くはかかるなんてこともあるそう。とくに市街地中心部は駐車料金が高いパーキングエリアが多いので、安めの遠い駐車場と契約していることが多いわけです。だから、派遣会社にはないしょで、就業先近くのスーパーやら、公共施設やら、病院やらの、マンションやらの駐車場に無断で…というのもあるようで。無断駐車は監視されていますから、なるべくやらないほうがよろしいです。警察に通報されたらアウトです。
この事情を聞いてから、派遣だろうと直接雇用だろうと問わず。
なるべく近くで通える職場を探したいと思うようになりました。それまでは中古でもいいのでマイカー通勤したら、公共交通機関の待ち時間も気にしなくていいし、早めに帰れるからと思っていたのですが。朝夕の渋滞があるからJR通勤でもさほど通勤時間が変わらないし、しかも電車内なら眠れたり、資格の勉強もできたり、時間の自由が利きます。でもマイカー通勤者の怒りを買いたくはないので、その利点は伝えずに、奨学金の返済が苦しくて自動車が持てないんです、とへりくだっています。
もちろん派遣会社問わず勤務先によって、通勤交通費の支給は異なります。
就業規則などを確認したほうがよろしいでしょう。派遣会社なら公開されていることが多いけれども、直接雇用の事業所では面接時には聞けないですよね…。少しでも経営状態のいい企業を選ぶしかありません。私の身内には公務員や大企業勤めの正社員、もしくは自営業者が多いので、勤務先へのマイカー通勤で不満を洩らしたり、他人に八つ当たりするようなタイプがいなかったので、驚きでした。派遣社員という働き方がもたらした、労働者間の分断であり、一種の悲劇なのかもしれません。
なお私は家族共有で自動車を保有していまして。
保険料やガソリン代自体は私が負担、修繕費は折半しています。会社の通勤用に使うと、個人事業上の経費率が下がってしまうので、普段はあまり使いたくないためです。
余談ですが、派遣ではないものの、採用されたがやたらしつこくJR通勤ではなく、マイカー通勤を要求してきた企業がありました。
あれは今思うに、人事担当者らがマイカー通勤で苦労しているので、私も巻き込みたかったのでしょうか。かなり月給のいい正社員職ならいいのだけど、契約社員からスタート扱いだったので、お断りさせていただきました。宅配や営業など車を使うような仕事は今後極力しないでしょうし、私に適性があるとも思えません。いつも荷物を届けてくださる方やお越しくださる営業マンには感謝しております。
交通費のかからない近場の職場だからといいまして、働きやすいとは限らないのが常です。私の住む自治体はやはり月給が安く、長時間労働になりやすい求人が多いですね。あと近くからの通勤者は、遠方通勤者からどうしても妬まれやすいので、サービス残業を押し付けられたりしやすくなります。あと、生活圏内に職場があるとプライベートが洩れやすくなりますし、辞めたあとも顔合わせしないといけなくなるので、あんがい不都合だったりもしますよね。
公共交通機関で通勤を検討する場合、定期券が何日分の勤務日数で元がとれるか試算しておくことです。
たいがい、平均的な週休二日制の職場の20日ぐらいで定期券を購入したほうがいいのです。ただし、派遣契約は途中で雇い止めに遭うリスクが高く、月半ばで終了すると日給分支給にされたりします。定期券は三箇月、六箇月分のほうが割安ですが、仕事に慣れないうちは毎月購入したほうがよいでしょう。
定期券があれば、休日にその職場の通勤圏内で遊びに行けますし、交通費の出ない・少ないバイトをすることもできて、とても便利です。これがマイカー通勤にはない利点ですね。田舎とはいいながら、役所や金融機関がすこぶる近く、また会社なども集まっており、公共交通機関のアクセスがいい場所に住んでいる者だからこそできること。その分、固定資産税は高めだったので、これぐらいは得をさせてほしいというのが本音ですね。
(2022/02/13)