陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

古書店は現在の読書文化の鏡

2018-10-27 | 読書論・出版・本と雑誌の感想

本日、10月27日は何の日?
変わり種の記念日としては、ルーズベルト大統領誕生日なのでテディベアズ・デーなのだとか。まあ、熊はどうでもいい。

はい、本日はもちろん文字・活字文化の日。2005年の「文字・活字文化振興法」により制定されたとのこと。そして、今日から11月9日までは読書週間。
ボジョレーヌーボー解禁日とか、正倉院展一般公開日などとも重なる本日。各地で文化イベントが目白押しのようです。なお、今年から11月1日も「本の日」として定めて、出版業界活気づけるキャンペーンがあるようですね。文化の日も近いですしね。

私は新聞の書評欄をよく読むのですが、最近、本そのものではなく、図書館活動や書店の商況に迫った記事を見かけます。紙媒体の書籍の衰退が騒がれますが、本・雑誌が置かれる場所も問題点として考案材料なのでしょう。

読売新聞2018年10月8日付け記事のコラム「記者ノート」の見出しは、「ブックオフ様変わり」。文化欄でよく見かける記者さんの取材記事ですね。今回はこれを参照に。


古本販売チェーンのブックオフコーポレーションは、中古の書籍、CD、DVD、ゲームソフトでおなじみの新古書店。街場の新刊書店とおなじく、古書業界でもいまや大型化・複合化は避けられない。

川崎市にあるブックオフ店舗は、家電量販店と併設された大型店舗。
スポーツ用品、洋服、貴金属類などのリサイクル商品がならび、古本・DVDやCD自体の売り場面積は全体の24パーセントほど。それでも、あくまで古本が商材の中心。多角化はさまざまな世代向けの客層をターゲットにしたもの。

10円買取で108円かそれ以上販売という粗利が批判されがちなブックオフ。
しかし、委託配本制で返本できる新刊書店と違い、古書店では売れ残り本は処分するしかない。仕入れにもリスクが伴い、運営も一筋縄ではいかない。

また古書が売れても著者の収入に結びつかないという批判も、古書を店内におくと広告にもなり、その著者の新刊本の購入に結びつくこともある。

最後に、記者は「古本と新刊の動きは連動している。古書店は、現代の読書文化の動向を示すもう一つの鏡」と結んでいます。

古書店パッシングに対する反論は、まったくそのとおりで異論を差しはさむ余地はないです。新刊書店には置いていないから、古書店に探しにいくこともありますし。漫画の1巻だけは古書店でたまたま買ったけれど面白かったから、新刊でずっと買い続けていることもあります。そもそも、出版されて新刊書店に納品された時点でその冊数ぶんの印税は、作家さんに払われていると思うのですが…。自費出版ならともかく、本の印刷数ではなくて、本の実売数で利益が得られるしくみなんでしょうか…? だとしたら、それは書店や読者だけの問題でもなくて、出版社と作家との契約上の問題であるように感じます。というか、新刊書店での実売数だけで印税払うとしたら、出版社は返本された分を定価割れだとしても古書店に流せば、利益得られるということになりますよね。本の流通経路がよくわからないので、いまのは素人の憶測なのですが。

古もの商売というのは、所有権の移転で成り立つので、作家の主張する著作権とは別物なんですよね。ただ、本、とくに漫画は所有せずに楽しめてしまうシステム(本屋での立ち読みやネット上の無料頒布など)が問題なので。実物を購入した人でないとブログなどで写真掲載できないとか、画像のクリック数に応じて版権者にお金が入るとかいうシステムとかがあれば…。レヴューのために漫画やアニメの画像の一部を載せている方も、版権者の利害を損なうためにやっているわけではないんですけどね…。でも、実質、やっていることは古書店でタダ読みさせているのと同じと責められたら、立つ瀬はありませんが。

読書文化の崩壊はどこからはじまっているのか?
本の売り場なのか、出版社や編集なのか、書き手のクオリティなのか。それとも読み手の変質なのか。読者にしても、悪意があってか、根も葉もないクチコミ投稿で購買意欲を削いだりすることもありえますし。私も自覚ありますが、応援レヴューをしている読者の存在が、作家にとっては重くなるケースもあるでしょう。なにかが当たれば、それに便乗して似たり寄ったりの企画、ネーム詐欺のパチモン本を出す出版社も芸がなくて飽きてしまった人もいますよね。一概にどこが、誰が、いつから悪いとは言えないのではないか。

この記事は、よくある読書文化衰退につき、特定の犯人捜しをしたくなる傾向に一石を投ずるものでした。


読書の秋だからといって、本が好きだと思うなよ(目次)
本が売れないという叫びがある。しかし、本は買いたくないという抵抗勢力もある。
読者と著者とは、いつも平行線です。悲しいですね。



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