陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

NHK大河ドラマ「平清盛」はおもしろくない?

2012-10-19 | テレビドラマ・アニメ
NHK大河ドラマ「平清盛」が佳境を迎えています。
例によって、管理人は大河ドラマなるものを毎回欠かさず観たことはなく、たいがい、中間部はすっとばしています。佳境をむかえたあたりに戻っておもしろければ、年末の総集編を観ればいいわけでして。ちなみに昨年の「江」は、学芸会みたいでうんざりしたので総集編すらスルーです。

その「江」をはるかに下回る視聴率を更新中で、ネット上でも初回から非難轟々、さらには神戸市長までがクレームをつけて物議を醸したのが今年の「平清盛」。秋になりましていささか余裕ができましたので、録画されていたものをご好意で視聴させていただきました。私が観はじめたのは、清盛が病から回復して出家し、都を福原に遷都するあたりから。率直にいいますと、おもしろいです。平氏の下積み時代あってこその栄華とはいいながら、いまの時代といいますのは、裸一貫でのしあがるみたいな泥臭い話は合わないと思うんですよね。ぜんぶ壊すんじゃなくて、旧弊の良き部分はかろうじて残しながらも、つくりかえていくのが、いま求められている政治のしくみだと思うのです。すでに固定されたシステムをいかに壊してつくりあげたうえに、それを維持するのに固執してしまう権力者の孤独が、よくよく滲み出ているのです。

キャスティングに関しては、父親役の中井貴一演ずる忠盛の没後、松山ケンイチ演じる清盛がやんちゃな暴走族のリーダーっぽくって嫌だったんですが(下手に野武士面が板につきすぎて、衣冠束帯が似合わない)、入道になってからはハマってきましたね。なんで平家の話なのに、敵方の源頼朝がナレーションしてるのかという疑問も、最近になって解けてきたといいますか。エヴァンゲリオンの主人公みたいに草食系でうじうじしている頼朝に喝を入れる野生少女・北条政子(演ずるのは杏だが、「北条時宗」で時頼を演じた渡辺謙との関連と思われる配役)というのが、なんとも異色の取り合わせなんですが、承久の乱の演説から察するに、ああいう女丈夫だったのかもしれませんね。自分の実家のために、実の息子たちを暗殺に追いこんじゃうぐらいなのですから。

脇役にそれなりの人材を配しているのもおもしろいところ。
有名な殿下乗合事件で知られる藤原基房役の細川茂樹の怪演(いちおうこの人、もと正義の味方です(笑))っぷりときたら、「時宗」の吹越満と肩を並べるくらい。卑屈そうな時忠役の森田剛もいい味出してますし、やっぱり後白河法皇こと松田翔太でしょうね。たぬきの後白河の印象を裏切るキャスティングでしたが。あの「仮面ライダーアギト」の神木隆之介くんがあんなに大きくなっていたのがびっくり。五条大橋の弁慶・義経のアクションはなかなか見応えあります。

役者の演技力もありますが、やはり終盤になって、平氏権勢時代とその斜陽に向かってのいわばわかりやすいエピソードになってきて理解しやすくなってきたのがいいですね。中盤のころは、人物関係がかなり複雑でわかりにくいという視聴者の声が多かったようで、ホームページの解説に工夫を凝らしたり、ラジオなどで見どころ特集を組んだりとしたようで。

「王家」という呼称がかなり煩わしかったのですが、演出やカメラワーク、脚本の噛ませ方がおもしろくなってくるにつれて、あまり気にならなくなったかも。ただ、ちょっと、ところどころで妙に現代劇のようなコミカルな演技(「はぁ?」とかいう小馬鹿にしたような受け答えでシリアス台無しはなんとかして)があるのが残念ではありますが。ちなみに私が気に入ってますのは、人気作だった「龍馬伝」みたいに、主人公を過剰に持ち上げすぎていないところですね。清盛は周囲から担ぎ上げられたわけではなく、自分の出生の秘密ゆえに,無頼ものとしての豪胆さと王侯貴族さながらの繊細さをもある人物として描かれています。権力を掌握し財を蓄えながらも、国を変えたいという大望を抱きながらも、その実、その野心に溺れてリーダーとして孤立してしまうという悲哀。現代にも通ずるものがありますよね。

ちなみに平清盛のイラスト(盛絵というらしい)や二次創作漫画などがPixivなどで大量に公開されていまして、なかにはプロの絵描きさんもいらっしゃるんですよね。からだのラインが隠れてわかりにくい和物の絵をうまく描かれていたり、役者の顔にそっくりだったりと、とても感心します。禿(かむろ)が登場したあたりから、とくに歴女の皆さんの好奇心をくすぐったのでは? ツイッター上でもbotの発言が愉快だったりします。視聴率が悪いのは、録画で観る家庭が増えたせいとも思われますが、さて。

そういえば、来年の大河ドラマは幕末・明治期の「八重の桜」(主演・綾瀬はるか)。そして再来年は岡田准一主演の「軍師官兵衛」と発表されています。新島八重の話は震災後の福島応援のための企画なのだそうですが、ヒロインがあの男まさりなヒロインだけに「江」の二の舞になりはしないかと心配。そして黒田如水は人気がある戦国大名らしいのですが、正直、織豊時代のお話は食傷気味なんですが…。

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