映画「イル・ポスティーノ」

1994年のイタリア・フランス映画「イル・ポスティーノ」は、主演のマッシモ・トロイージの遺作としても知られています。
彼は心臓病で余命幾ばくもない身を押して、出演を果たし、完成直後、その日のうちに41歳で早逝。作中の俳優は、ひどく痩せこけていますね。

以下、ネタバレあり。

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1950年代のナポリ沖の小島。
漁師の息子マリオは、お涙金ほどの仕事にありつく。それは、亡命してきたチリの国民的詩人パブロ・ネルーダへの手紙を配達すること。
思想家でもあるネルーダは街の共産党員たちにとって、憧れの的。押し寄せる手紙も女性からの恋文が多い。
最初は煙たがられるマリオだが、次第に詩人とは打ちとけあう仲に。ネルーダに倣って詩作に励みはじめたマリオは、酒屋の美しい看板娘ヴェアトリーチェに求愛の詩を書いて送りつける。

だが、ネルーダ夫妻は祖国へ帰還することに。詩人を失ったことで、労働者の味方である共産党員の機運は下降し、民主党員がのさばりはじめる。マリオには、ネルーダから荷物を送ってくれという用件のみの手紙が届き、失望する。
だが、詩人によって感性を開いてもらったことを思い返した彼は、ネルーダ宛に故郷の島の美しさを送り届けようと決意する…。


詩人に憧れたが、郵便配達人で終わってしまったマリオの人生。
けっきょく、彼がネルーダに届けようとしたものは送られず、ネルーダ夫妻が数年後に訪れた島の別荘で、聞くことになります。

感動できないことはないけれど、この主人公の青年の最初の詩作の動機が女性にモテるためだったり、ラブレターにネルーダが妻に捧げた手紙を勝手に盗作したり、したのはどうなんでしょうね。有名人の太鼓持ちをしている、才能のない青年のようにしか見えません。

ついでにいうと、飾ったような言葉の台詞は多々ありますが、ふつうの会話で心に響くような会話があまりなかったような。
そもそも、詩人や作家、そして政治家なんて偉くなったら、あくせく働く労働者の気持ちから遠ざかってしまう方々。こういうタイプをやたらめったらもちあげているような作品が好きではありません。

詩人ネルーダ役は「ニュー・シネマ・パラダイス」のフィリップ・ノワレ。
パブロ・ネルーダは実在するチリの詩人で、ノーベル文学賞受賞者。ベトナム戦争を批判してニクソン大統領を皮肉ったことでも有名。この映画は、彼のイタリア亡命時代を題材としていますが、内容はまったく架空のもの。

本作は、第98回アカデミー賞オリジナル作曲賞(ドラマ部門)受賞作。

（〇九年八月二十二日）

イル・ポスティーノ(1994) - goo 映画