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私の「思い出せない夢のいくつか」(松浦友)

弓澤さんのインタビューで「三分に一度何かが起こる」と書かれていた演出術をお持ちの松浦友さんにエッセイを依頼しました。
まあ、私が見てきた限り、3分は言い過ぎかなあ。5分に一度、いや7分に一度くらい、かも。
それくらい分刻みでお客様へ作品をお届けする気配りをしている演出家の言葉です。

私の「思い出せない夢のいくつか」

演出を担当しています松浦友です。
公演タイトルをお題に何か書け、というなかなか無茶な、しかも締切がとてもシビアな注文を受け、受けてしまったからには書かなければならないので、雑文ご容赦ください。

さて、私は根っからひねくれているのか「夢」と聞くと、寝ている間のそれではなくて、アメリカンドリーム的な、希望とよくセットで使われる方を思い浮かべます。
15周年記念作品「ハーフ2」でも回想シーンで語られていた言葉ですが、「夢」って別に職業じゃなくていいんじゃないかって思うのです。

僕は今でも覚えていますが、中3のときに確か僕の前か、斜め前にいたとても可愛いクラスメイトに誇らしげに「いつかチャップリンのように全部自分で作る演劇を創りたいんだ」と言っていました。
そして2001年4月の「ハーフ」というCTTでやった試演会をその子は観に来てくれたのです。ちなみにその10年後?くらいにその子のお母さんがその子あてのDMでワークショップに来てくれました。

先日、枚方なぎさ高校で授業の一環として、今回の公演の試演会をやりました。同じ平田オリザさんの「転校生」という芝居を彼らもするからです。
つまり、昔からやっていることは変わらず、夢は実現しっぱなしということになります。

でもチャップリンのようにではありません。もはや自分はでておらず、音楽も作っていません。

でもここまで辛抱して読んでくださった方は気付かれたかもしれませんが、私にとって演劇を創って売ることが夢なんじゃなくて、試演をしたり続編を作ったり何度もなんども作品を進化させ深化させていくことが夢なのです。
なので、記念“作品”、演劇“作品”なのです。作品を創るということこそが夢でした、たぶん。

というのは、
長年、「夢を見つけろ、やりたいことを探せ」という風に青少年たちに脅迫する大人たちは嫌だったんですが、上に書いたことは作品を創るということがやりたいことになるよね・・・と思い始めたわけです。

あれれ、と。
いやいやおれはそんなに明確に夢とは思っていなかった気がする。

確かに言ったことは必ず実現させる、自分がそのために何者にでもなるって思って「何になりたい?」っていう質問はナンセンスだと思っていたんです。
でも、宣言したその瞬間と、試演会に来てくれた時の彼女の笑顔、わくわくした顔、彼女の名前が僕の好きな「ふたり」という映画に出てくる女優さんによく似た名前(漢字違い)だったこと、なんかはしっかり覚えているんですけど。

実は自分の夢が本当にそうだったか、今となってはよくわかりません。
宇宙や深海には行きたいし、物書きとしてもう少し頑張りたいとも思うし、もちろん幸福な家庭を築くっていうのもあるし。
いま、たまたま演劇を創る作業を奇跡的にできているだけなのです。そう思ってそうしたというよりは偶然の産物かも。

今日なんか、朝になぎさ高校で転校生の稽古(授業です)をして、昼からKAIKA(共催事業だから稽古場を提供してくれているのです、ありがとうございます!!!)で夜まで稽古して。
そしてこの文章を書いているわけですが、こんな演劇三昧できているのがじゃあしんどくないかっていうと、山本さんがインタビューの最後で言っていたように、もう疲労困憊なわけで。

でもでも、頭には公演のためのアイデアがいっぱいで、今もインプットが足りなくて東山青少年センターで買った(800円)DPWとココロからだンスの記念冊子を帰りの電車で読んだりして。
そして心は創造活動ができる、あるいはこれからさらにやっていくドキドキわくわくで満ちていて。
それでも、演劇を創ることは日常の延長ではあるんですよね。

書き連ねましたけれども、いやはや、ちっとも演劇が夢だったのか全く思い出せないのでした。

(蛇足)
この文章のきっかけはイギリスに行く友人から、僕も演劇の仕事で行けたらなあ、という話をしていたら「それは大きな夢ですねえ」と言われて思った疑問がきっかけである。
彼はボランティアで行くのだけれど、僕自身、演劇の仕事で行くことが夢かと問われたら、あんまりそれはピンとこないのだ。
それを直接聞いた妻も、夢とまで思わないけれど実現したら嬉しい、とおもってくれるのか、ちゃんと英語を勉強しようとしていてえらいなあって思うのである。
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