Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

電子図書館サービスにおける図書館連携

2012年12月08日 | 情報法
昨日は、札幌市で電子図書館サービスにおける図書館連携研究会に出席した。

電子書籍の取り扱いは、公立図書館でもいろいろな問題を生んでいる。最大のものは、電子書籍の貸し出しに関する著作権法上の問題である。しかし、それをひとまず措くとしても、電子書籍を蔵書(自治体の財産)とみなすことができるか、買い切りではなく月額・年額制のライセンスになっているものをどのように費目として計上するか、等の問題がある。
さらに、サーバにアクセスして閲覧する型の電子書籍を導入しようとする場合、既存の図書館の情報システムにどのように組み込むかという問題がある。多くの公立図書館は、それぞれ独自の貸し出しや蔵書管理等の手順があるため、図書館用のシステムをカスタマイズして用いている。このシステムの中に電子書籍の閲覧や貸し出しの機能を追加するためには、かなりのシステム改修費用を必要とする。かといって、電子書籍の管理だめのために新たなシステムを導入したり、既存のシステムと併用したりすることは不効率である。
一方、公立図書館が所蔵している行政資料や郷土資料については、各図書館で電子化をすすめる動きが見られる。「市政便り」等の広報誌や「○○市何十周年」の類の資料は、散逸しやすく、行政においても1部しか残っていなかったり、傷みやすかったりするために、貸し出しをすることができないという問題がある。しかし、電子化すればそのような問題の多くは解決できる。
ただ、このような資料については、電子書籍という体裁を取る必要は無く、単純にPDFファイルにして、それをホームページに公開すればそれで済むでは無いかという意見もあるようである。
さらに難しいのは、電子書籍の相互貸借をどのように行うかという点である。公立図書館では近隣の自治体の公立図書館との間で蔵書の相互貸借を行うことによって、蔵書不足を補おうとしている場合がある。このような相互貸借は、手続も複雑であり、公立図書館にとっては悩みの種にもなっているらしい。また、大学図書館間の相互貸借とは異なり、公立図書館における相互貸借は、かならずしも利用者から送料などを実費を徴収するとは限らないらしく、相互貸借が活発になると図書館の予算を圧迫するという問題もあるようだ。
その点で、電子書籍の相互貸借が実現すれば、送料などの問題はかなり解消することが期待される。
しかし、電子書籍の相互貸借は、利用者に直接近隣図書館の情報システムにアクセスしてもらうのか、コンテンツを一度先方の自治体の図書館から収受しそれにアクセスしてもらうのか、相互貸借を行っている図書館で共通のシステムを構築するか、等のさまざまな態様が考えられる。各公立図書館は、それぞれF社、N社、H社、M社等の図書館情報システムを導入している場合が多い。換言すれば、かなりベンダーにロックインされている。これらの異なる企業製の情報システム間で連携機能を実現することは、想像以上の困難が伴う。さらに
自治体全体で一つの情報システムを利用し、その中の一部の機能として図書館情報系が組み込まれている場合もあり、このような場合には図書館だけの判断で連携を実現することはできない。

いずれにしても、これからの司書職には、情報システムに関する知識が必須であるという思いを強くした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする